小学校受験の願書は、単なる出願手続きではなく、学校と親御さんとの最初の大切な対話の場です。近年、その願書のテーマが毎年変わる傾向が強まっており、学校ごとに求められる内容も多様化しています。私たちお受験ラボ編集部では、2025~2026年度の願書テーマ変更データをもとに、「どの学校がテーマを変えているのか」「その背景にはどんな意図があるのか」「親御さんはどう対応すべきか」を詳しく分析しました。この記事が、あなたの願書準備に役立つことを願っています。
願書テーマ変更の背景と学校側の狙い
学校が願書テーマを変える理由
願書のテーマ変更には、学校側の明確な教育戦略が反映されています。主な理由は以下の通りです。
- 教育理念の再確認:社会環境の変化に合わせて、学校の教育方針や考え方をアップデートしたい。
- 志願者層の選別:表面的な対策ではなく、本気で学校の教育に共感し理解する家庭を見極めたい。
- 入試制度との連動:面接や考査の内容変化に合わせて願書の設問を調整している。
- 親世代のニーズ把握:家庭の教育観や価値観をより深く知ることで、学校との相性を見極めたい。
2020年以降のトレンド分析
コロナ禍を境に願書テーマの変更頻度が増えています。これは学校が子どもの学力だけでなく、家庭の価値観や教育姿勢との共鳴度を重視し始めたことを示しています。つまり、願書は単なる志望理由の説明から、家庭の教育実践や哲学を伝える重要なツールへと変化しているのです。
願書テーマ変更が多い学校TOP10と特徴
第1位:慶應義塾幼稚舎 ―― 課題図書「福翁自伝」の安定したテーマ
願書テーマ例:
- 自由記入欄:「本校を志望した理由、志願者の様子、家庭の教育方針等」
- 課題図書「福翁自伝」を読んで感じたこと(ほぼ毎年同じテーマ)
慶應幼稚舎は課題図書が変わらないものの、親御さんの人生観や教育観によって解釈が大きく異なるため、実質的には毎年異なる願書になります。近年は「独立自尊」の概念が、グローバル化時代の多様性尊重へと進化している点がポイントです。
親御さんが陥りやすい誤解:
- 福翁自伝を学力重視や競争志向の象徴と誤解する → 避けたい
- 福澤諭吉の「個性と自由」の本質を読み解き、家庭の教育方針と結びつける → 正解
2027年度の予測:課題図書は継続される見込みですが、より家庭の哲学性が深く問われる傾向が強まるでしょう。
第2位:昭和女子大学附属昭和小学校 ―― 「探究」と「国際」教育へのシフト
願書テーマの変遷:
2019年度まで:従来型の志望理由中心 2020年秋:国際コース・探究コース新設に伴う関心理由 2024年度:SDGs視点や探究学習の理解を深める内容 2025年度予測:社会課題への視点深化
昭和女子は単なる志望理由ではなく、学校の教育理念を理解しているかを願書で判定する方式に変わりました。特に探究コース志望の家庭には、家庭での探究的な学びの具体例が求められます。
親御さんが注意すべき点:
- 「探究学習が大事」とだけ書く → 不十分
- 日常の具体的な出来事を通じて子どもに問いかけている実践例を書く → 理想的
第3位:青山学院初等部 ―― 学校見学経験を問う設問が増加
願書の特徴:「本校の教育の様子をどのように知りましたか?」という設問が定番化しています。
コロナ禍以降、オンライン説明会やオープンスクールなど多様な情報接触機会が増えました。青山学院は親御さんが実際に学校を訪れ、理解を深めているかを重視しています。
設問の変化:2024年度までは「なぜ本校を志望したか」だけでしたが、2025年度からは説明会や公式サイトなど具体的な情報源を明記させる形式に変わりました。
親御さんが陥りやすいミス:
- 学校訪問なしに「HPを見て共感しました」と書く → 面接で矛盾を指摘される可能性大
- 実際に訪問し、校長先生の話や1年生の様子など具体的に書く → 評価される
第4位:早稲田実業学校初等部 ―― 「社会貢献」テーマの強化
願書テーマの変化:
従来は「教育理念に共感した」という内容が中心でしたが、現在は「学んだ後に社会にどう貢献したいか」を問う設問が増えています。特に2026年度からは「サステイナビリティ」や「SDGs」といったキーワードが重要視される見込みです。
第5位:学習院初等科 ―― 「家庭での読書習慣」を問う設問追加
2025年度から願書に「家庭での読書習慣」について記述する欄が加わりました。これはスマートフォン利用増加による読解力低下への危機感からで、学習院は「読む力=学ぶ力の基盤」と位置づけています。
第6位:聖心女子学院初等科 ―― 「女性としての役割」への問い
「女性としてどのような価値観を持って子育てをしていますか?」という設問が新たに加わりました。ミッションスクールとしての女性の社会的役割に対する家庭の考え方を深く知るためのものです。
第7位:立教小学校 ―― 「家庭の倫理観」を具体的に問う設問へ
従来の「キリスト教精神」という抽象的なテーマから、より具体的に「日々の生活の中で正直さをどのように教えているか」など、家庭での倫理的な実践を記述させる方向に変わっています。
第8位:白百合学園小学校 ―― 「カトリック教育理解」の深化
願書で「マリア様への祈り」や「家庭での宗教的実践」について問う設問が増えています。単なるカトリック精神への共感ではなく、家庭での宗教的営みの具体性を求める傾向です。
第9位:昭和女子大学附属昭和小学校(再登場) ―― 「家庭での自然体験」
2026年度から「お子さんが自然と接した経験を3つ挙げてください」という設問が新設されました。探究学習の基盤となる自然への感性を家庭でどう育んでいるかを見極める狙いがあります。
第10位:成蹊小学校 ―― 「家庭での『考える力』育成」を可視化
願書に「お子さんに『なぜ?』と聞かれたとき、どのように答えていますか?具体例をお書きください」という設問があり、親の問い返し方や考えさせ方を通じて家庭の教育スタイルを見ています。
願書テーマ変更の全体的な傾向と分析
トレンド1:「学校の理想像」から「家庭の実践」へ
かつては「学校の教育方針に共感しました」という願書が主流でしたが、今は「我が家ではこうした教育を日常で実践しています。だから貴校を選びました」と、具体的な家庭の教育姿勢を示す内容が求められています。学校は親の建前ではなく、日常生活の中での教育姿勢を重視しているのです。
トレンド2:「道徳性」「倫理観」の具体化要求
特にミッションスクール系で顕著ですが、「どんな人間になってほしいか」という抽象的な願書テーマから、「日常の具体的な場面でどのように教えているか」という具体的な記述が求められるようになっています。
トレンド3:SDGsや社会課題への感度の高まり
2024~2025年度の願書では「サステイナビリティ」「多様性」「社会貢献」といったキーワードが急増し、学校は親御さんの社会問題への意識や視点を測り始めています。
トレンド4:学校訪問の実績化が重要に
オンライン説明会が増えた反面、実際に学校を訪問しているかどうか、オフラインでの関与度を問う学校が増えています。願書の設問で学校訪問経験を具体的に書くことが重要です。
2027年度の願書テーマ予測
変化が確実に予想される学校
- 昭和女子大学附属昭和小学校:自然体験や社会課題への気付きがより詳細に問われる。
- 早稲田実業初等部:グローバル化時代における日本人としてのアイデンティティがテーマに。
- 聖心女子学院初等科:ジェンダー平等など、現代的な女性観が問われる。
テーマが変わりにくい学校
- 慶應義塾幼稚舎:「福翁自伝」は継続されるが、親の人生観がより深く問われる。
- 学習院初等科:読書習慣に関する設問は定着化。
全体的な傾向
2027年度の願書は、親御さん自身の教育哲学や家庭での実践が、より詳細かつ本質的に問われる傾向が強まるでしょう。日々の生活の中でどのように子どもを育てているかを具体的に伝えることが、合格への大きなポイントとなります。
願書テーマ変更に備えるための具体的な対策
1. 早めの情報収集(9月頃)
願書を購入する前に、前年度の合格者から具体的な願書テーマを聞き出しましょう。オンラインサロンやSNSでの情報共有も信頼できる情報源になります。
2. 学校訪問を確実に行う(6月~9月)
願書に「学校の様子をどのように知ったか」という設問がある場合は、必ず1回以上訪問しておくことが大切です。実際に足を運ぶことで、願書や面接での説得力が増します。
3. 家庭の教育観を言語化する(7月~8月)
願書を書く前に、親として「我が家の教育で大切にしていることは何か」を紙に書き出してみてください。そのうえで学校の理念と照らし合わせ、共通点や相違点を整理する作業が効果的です。
4. 複数校の願書テーマを比較する(8月)
複数の学校の願書を見比べることで、各校の教育の本質や特徴が見えてきます。違いを理解することが、願書作成の質を高めるポイントです。
次に読むべき記事
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- 学校別対策 → 学校別 願書テーマ一覧|2027年度の変更点まとめ
記事情報
- 掲載日:2025年11月
- データ出典:各小学校募集要項(2025~2026年度)、合格者ヒアリング、教育関係者インタビュー
- 参考資料:伸芽会、理英会、こぐま会の願書分析資料

