どうもお受験ラボ編集部です。今回は過去5年で見る人気校の動向についてまとめてみました。
小学校受験の人気は年次で大きく変動しますが、単年の倍率だけを追う判断は危険です。とくに近年は「少子化」「インター人気」「働き方の多様化」が同時進行し、倍率の変動幅は以前より大きくなっています。
そこで本稿では、過去5年間の倍率データと主要校の構造変化を基に、
2027年度の受験動向を“予測可能な範囲で”精度高く分析します。
■ 過去5年で何が起きたか?倍率トレンドの全体像
● 2020年:コロナ禍で「私立志向」が急拡大(前年比+20%)
安全性・オンライン授業対応を求めて、家庭が公立から私立へシフト。
● 2021〜2023年:増加は継続するが、伸び率は横ばい
競争環境が安定し、上位校を中心に高倍率を維持。
● 2024年:応募者が前年比8%減で調整局面へ
外出制限の解除とインターナショナルスクール人気が影響。
● 2025〜2026年:二極化が鮮明に
- 「教育内容に独自性のある学校」…倍率上昇
- 「伝統校だが特色が弱い学校」…緩やかに下降
- 「中堅+理念明確校」…堅調
■ 急上昇校の代表例:昭和女子大学附属昭和小学校
国際・探究コース新設による構造的上昇
過去の倍率推移(重要ポイントのみ抜粋)
| 年度 | 倍率 | 変化要因 |
|---|---|---|
| 2019 | 約2倍未満 | 基盤期 |
| 2020春 | 約2倍弱 | 従来型 |
| 2020秋 | 約5.5倍 | 国際・探究コース新設 |
| 2021 | 約7倍 | 評判拡大、口コミ加速 |
| 2024 | 約9倍(ピーク) | 国際志向家庭が集中 |
| 2025 | 約8倍 | 調整局面 |
● 昭和女子が上昇した理由は「外部要因+内部改善」の両軸
- 新コース設置による“教育内容の非連続的アップデート”
- 英語・探究領域の強化
- 大学附属としての進路一貫性が明確化
● 2027年度予測
倍率7~8倍で高水準のまま安定。
ピークアウトはしたが“選択される側”の地位は維持。
■ 安定した高倍率校:洗足学園小学校
志願者は減少でも合格難度はむしろ上昇
洗足の特徴は、倍率が6倍前後で完全に安定していること。
過去の倍率・志願者推移
| 年度 | 倍率 | 志願者数 | 合格者数 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2020 | 約6倍 | 約600〜650 | 約100〜110 | 基準期 |
| 2022 | 6.7倍 | 707 | 105 | 志願者増 |
| 2023 | 6.4倍 | 626 | 98 | 親子面接廃止=腕試し減 |
| 2024 | 6.7倍 | 674 | 100 | 合格者増 |
| 2025 | 約6.5倍 | 約650〜680 | 約100〜105 | 安定推移 |
● 2023年度の制度変更が大きな意味を持つ
- 親子面接を廃止
- アンケート形式へ変更
→ “本気の受験者だけが残った” ため、表面の倍率より難度は高い。
● 2027年度の予測
6倍前後で安定。
中学受験実績の強さから、志望者は底堅い。
■ 女子校の構造変化:東洋英和女学院小学部の調整
11.6倍 → 約7倍まで大幅調整。2026以降は5〜6倍予測。
推移
| 年度 | 倍率 | 要因 |
|---|---|---|
| 2023 | 11.6倍(ピーク) | コロナ後の反動・人気集中 |
| 2024 | 約10倍 | 調整開始 |
| 2025 | 約7倍 | 併願戦略の分散 |
| 2026 | 推定5〜6倍 | さらに調整見込み |
● 女子校全体で“分散の時代”に
- 超難関志向が弱まり、理念重視が増加
- 川村小・光塩女子などは堅調
● 2027年のポイント
東洋英和を含め女子校では、「中堅校への回帰」も進む。
■ 埼玉県のトレンド:開智小学校の成長鈍化
人気は高いが、倍率は“増員”で横ばい
推移
| 年度 | 倍率 | 志願者 | 定員 |
|---|---|---|---|
| 2021 | 約1.8倍 | 216 | 120 |
| 2022 | 2.3倍 | 318 | 120 |
| 2023 | 2.1倍 | 328 | 120 |
● 倍率低下=人気低下ではない
合格者数の調整(増加)によるもの。
埼玉は探究/STEM型の選択肢が拡大しており、志願者が分散中。
● 2027年度予測
2〜2.5倍で堅調、ただし“突出する可能性は低い”。
■ 倍率データから導ける受験戦略(専門家視点)
1|倍率ピークアウト校は“安全に攻められる”
例:東洋英和
過熱の反動で志願者が減少しているため、実力層が薄まる可能性がある。
→ ただし、試験内容は難度維持の学校が多いので油断は禁物。
2|急上昇校は「願書・出願タイミング」が勝負
例:昭和女子
教育改革・新コースは志願者を呼びやすい。
→ 初動の早さ(説明会参加・願書提出)が差になる学校が多い。
3|入試制度変更は“倍率より重要”
例:洗足
表面の倍率より、受験者層の性質が変わる方が難度に影響する。
→ 公式の発表は必ず逐一チェック。
■ 2027年度倍率予測まとめ(精度重視)
◆ 上昇または高水準維持校
- 昭和女子:7〜8倍で安定
- 開智小学校:2〜2.5倍で微増
- 東京農業大学稲花小学校:13倍前後で維持(伝統的高倍率)
◆ 調整が続く学校
- 東洋英和:5〜6倍
- 立教女学院:3〜4倍で落ち着く
- 白百合学園:3〜4倍(非公開だが推定値)
◆ 全体の変動要因
- 少子化の加速:倍率低下圧力
- インターナショナルスクールの定着:併願分散
- “中学受験疲れ”への反動:思想・理念型の学校へ回帰
■ お受験ラボ編集部の総括
倍率は“結果の数字”にすぎず、
学校の教育内容・制度変更・受験者層の質を合わせて見なければ、正しい判断はできません。
2027年度以降は、
- 独自性のある学校
- 中堅で理念明確校
- 教育改革を進める学校
が強く選ばれる構造が続きます。
「数字の表面」を追わずに、「数字の背景」を読み解く。
それこそが、受験戦略の核心です。
記事
- 願書テーマ変更 → 願書内容の変更が多い学校TOP10|最新トレンドまとめ
- 面接戦略 → 親子面接の頻出質問50選|合格する答え方テンプレート
- 個別校の対策 → 行動観察が重視される学校一覧と特徴比較
記事情報
- 掲載日:2025年11月
- データ出典:各小学校公式入試データ、教育図書21調査、お受験じょうほう
- 参考:理英会「2026年度合格速報」、こぐま会入試分析

