お受験ラボ編集部です。小学校受験の情報収集をしていると、必ず目にするのが「倍率」という数字です。しかし、倍率だけで学校の難易度を判断してしまうのは危険です。実際には、表面上の倍率と実際の難易度が大きく異なる学校が多く存在します。
この記事では、2026年度の入試データをもとに、「倍率」「定員」「合格実績」という3つの視点から、首都圏の私立小学校の本当の難易度を見極めるポイントをわかりやすく解説します。
倍率が高いからといって難関校とは限らない理由
実質倍率の落とし穴を知る
一般的に倍率は「志願者数÷募集定員」で計算されますが、ここには注意が必要です。
具体例:東京農業大学稲花小学校
- 志願者数:男子551名・女子444名(合計995名)
- 募集定員:男子36名・女子36名(合計72名)
- 表面上の倍率:13.8倍
- しかし、繰り上げ合格を含めた実際の合格者数は定員を超えています
- 実質倍率は約9.4倍となります
つまり、見かけの倍率は13.8倍ですが、実際に合格した人数で割ると、より多くの子どもが合格していることになります。この差を理解しないと、難易度を誤解してしまいます。
内部進学者数が外部受験枠を圧迫する
もう一つ見落としがちなポイントは、内部進学者数です。
系列幼稚園を持つ学校では、例えば定員120名のうち40名が内部進学で埋まることがあります。つまり、一般受験で狙える実質的な枠は80名に減ってしまうのです。募集定員表に120名とあっても、外部受験者にとっての枠は大きく異なります。
2026年度の定員圧縮例:
学校募集定員内部進学者実質外部枠 青山学院初等部男女88名内部生多数44名程度 学習院初等科男女80名系属から若干75名程度 サレジアン国際学園目黒星美小学校102名なし102名
対策としては、願書提出前に必ず各校の「内部進学者数」を確認し、実質的な外部受験枠を把握することが欠かせません。
難易度を左右する「出口」の進学実績
小学校選びで見落とされがちなのが、卒業後の進路です。小学校受験の難易度は、入試の難しさだけでなく、「6年後にどの大学へ進学できるか」という出口戦略も大きく影響します。
MARCH以上への内部進学保証がある学校の価値
難関校の中には、内部進学率が非常に高く、難関大学進学がほぼ保証されている学校があります。こうした学校は、倍率の高さだけでなく、将来の安心感が人気の理由です。
慶應義塾幼稚舎
- 内部進学率:ほぼ100%
- 進学先:慶應義塾大学(経済・法・商学部中心)
- 大学偏差値:65~72
早稲田実業学校初等部
- 内部進学率:98%以上
- 進学先:早稲田大学(政治経済・教育学部中心)
- 大学偏差値:65~70
立教小学校
- 内部進学率:95%以上
- 進学先:立教大学(経営・文学部中心)
- 大学偏差値:60~65
こうした学校は、倍率の高さ以上に「6年後の大学進学がほぼ確定している安心感」が保護者に支持されています。
中学受験を視野に入れた学校選びも重要
一方で、内部進学率が50%以下の学校では、多くの卒業生が中学受験に挑戦します。
昭和女子大学附属昭和小学校
- 内部進学率:約60%
- 外部中学受験者:約40%
- 進学先:開成、麻布、慶応普通部など難関中学多数
このように、外部受験サポートが充実している学校も存在し、子どもの志望や家庭の方針に合わせた選択が求められます。
2026年度データによる真の難易度ランキング
倍率だけでなく、実質倍率と出口戦略を組み合わせた総合的な難易度を示します。
最難関グループ(実質倍率6倍以上+内部進学保証)
- 慶應義塾幼稚舎 – 実質倍率8~9倍、内部進学率100%
- 早稲田実業学校初等部 – 実質倍率5.5倍、内部進学率98%以上
- 東洋英和女学院小学部 – 実質倍率7倍、内部進学率90%以上
- 立教小学校 – 実質倍率4~5倍、内部進学率95%
対策の目安: 年中4月からの幼児教室通塾を始め、ペーパー試験・行動観察・面接の総合的な対策が必要です。
上位難関グループ(実質倍率3~6倍+良好な進学実績)
- 東京農業大学稲花小学校(実質倍率9.4倍)
- 成蹊小学校(実質倍率3.2倍)
- 青山学院初等部(実質倍率3倍程度)
- 学習院初等科(実質倍率3~4倍)
対策の目安: 年中9月からの塾通いで短期集中の基礎固めが可能。共働き家庭でも無理なく対応できる難易度です。
中堅グループ(実質倍率1.5~3倍+安定した進学実績)
- 聖学院小学校、淑徳小学校、昭和女子大学附属昭和小学校
- 成城学園初等学校、聖ドミニコ学園小学校
- 桐朋学園小学校
対策の目安: 年長春からの本格的な対策で十分。家庭学習と定期的な模試を活用し、方針をしっかり把握しましょう。
倍率を正しく見るための3つのチェックポイント
- 内部進学者数を確認しましたか? → 定員に対する内部進学者の割合を把握し、実質的な外部受験枠を計算しましょう。
- 繰り上げ合格の有無を確認しましたか? → 実質倍率が表面倍率より低くなるケースがあります。
- 卒業後の進学先を確認しましたか? → 内部進学保証の有無が学校の価値を大きく左右します。
難易度判定よりも大切な「学校選び」の視点
数字だけを見ると難易度の算出は複雑に感じられますが、私がいつも伝えたいのは、数字を読み解く力以上に「その学校があなたの家庭の教育方針に合っているか」を重視してほしいということです。
実質倍率が低くても、教育理念や校風が合えば合格の可能性は高まります。逆に難易度が低い学校でも、面接で家庭の考えが伝わらなければ評価は厳しくなります。
倍率・定員・進学実績はあくまで学校理解のための補助情報です。説明会での校長先生の話や校舎の雰囲気、子どもとの相性を最優先に考え、納得のいく学校選びを進めてください。

