「じっとしていられない」「こだわりが強い」「集団行動が苦手」 わが子にいわゆる発達の凸凹(グレーゾーン)の傾向がある場合、小学校受験は無謀なのでしょうか?
親としては、「個性として伸ばしてあげたい」という気持ちと、「私立の厳しい規律になじめるのか」という不安の間で揺れ動くことと思います。 結論から言えば、凸凹があっても合格しているお子さんは沢山います。 しかし、学校選びと戦略を間違えると、入学後に親子ともに苦しむことになります。
この記事では、発達が気になる子の志望校選びの基準と、願書や面接でのカミングアウト(公表)の是非について、デリケートな部分に踏み込んで解説します。
1. 私立小は「管理型」か「自由型」かで対応が真逆
発達に特性のある子が最も避けるべきなのは、**「規律と画一性を重んじる管理型」**の学校です。 カトリック系の伝統女子校や、一部の進学重視校などがこれに当たります。「皆と同じことができる」ことが評価の前提となるため、特性が「問題行動」として扱われ、入学後に退学勧告を受けるリスクがあります。
一方、**「個性を尊重する自由型」の学校(和光、明星学園、東洋英和、玉川学園など)や、「多様性を受け入れる」**ことを理念とする新興校(ドルトン東京など※中学校ですが類する理念の小学校)では、凸凹を「才能」として評価してくれる土壌があります。
戦略: 偏差値やブランドで選ぶのではなく、**「先生が子どもの逸脱した行動をどう処理しているか」**を説明会や公開授業で確認してください。 叱りつける学校ではなく、「面白い発想だね」と拾ってくれる学校が正解です。
2. 学校側に「特性」を伝えるべきか?
願書の備考欄や面接で、子どもの特性(診断書がある場合もない場合も含め)を伝えるべきかどうか。 これは非常に高度な判断が必要ですが、基本戦略は以下の通りです。
ケースA:試験行動に支障が出る場合
(例:大きな音が苦手でパニックになる、特定の支援具が必要) 👉 事前に相談すべきです。 隠して受験し、当日パニックになれば不合格です。事前に相談することで、別室受験などの配慮が得られる学校もあります(国立小などは比較的合理的配慮が進んでいます)。
ケースB:一見して分からないが、集団生活で懸念がある場合
👉 戦略的に「伝えない」選択肢もあります。 入試はあくまで「その時点での選抜」です。合否の判定にバイアス(「手がかかりそう」という予断)をかけさせないため、あえて伝えず、入学後に担任と密に連携をとってサポートしていく家庭も多いです。 ただし、これは「入学後に学校のルールに適応できる見込みがある」場合に限ります。
3. 「落ち着きのなさ」を武器に変える
グレーゾーンの子は、特定の分野に**驚異的な集中力や知識(ギフテッド的才能)**を持っていることが多いです。
- 面接対策: 「落ち着きがない」は「好奇心旺盛」と言い換えます。 「息子は興味のあることには時間を忘れて没頭します。最近は昆虫の生態に夢中で、図鑑を暗記するほどです」 このように、ネガティブ要素をポジティブな才能としてプレゼンします。
- ペーパー対策: 視覚優位(目で見て覚えるのが得意)な子が多いため、図形問題などは得意な傾向があります。得意分野で点数を稼ぎ、苦手な行動観察(協調性)をカバーする戦略を立てましょう。
4. 結論:公立の「支援級」という選択肢も視野に
小学校受験をする最大の目的は、**「わが子が一番輝ける環境を用意すること」**のはずです。
もし、受験準備の過程で子どもが深く傷ついたり、自己肯定感を失っているようなら、勇気を持って「撤退」あるいは「特性に理解のある公立小(通級・支援級含む)」を選択することも、立派な親の愛です。
「私立に行けば手厚く見てもらえるはず」というのは幻想です。私立は専門の支援員がいないケースが大半です。 **「子どもの笑顔が消えない選択」**を最優先にしてください。
私立小生の放課後どうする?|「民間学童」vs「公立学童」の現実と、小1の壁対策
「共働きでも合格できますか?」という質問には「YES」と答えます。 しかし、「共働きで私立小に通わせるのは楽ですか?」と聞かれたら、答えは「NO」です。
最大の壁は、入学後に訪れる**「放課後の居場所(小1の壁)」**です。 地元の公立小なら、校内にある学童保育(公立学童)にそのまま行けますが、電車通学の私立小生には、複雑なパズルが待ち受けています。
この記事では、私立小に通う共働き家庭が直面する「学童問題」のリアルと、その解決策(民間学童・アフタースクール)について解説します。
1. 「地元の公立学童」はアウェー?
制度上は、私立小に通っていても居住地の公立学童を利用することは可能です。しかし、実際には以下のハードルがあります。
- 人間関係のアウェー感: 周りは全員、同じ公立小の顔見知り。制服を着てランドセルを背負った私立小生が入っていくと、どうしても浮いてしまい、「よそ者」扱いされるリスクがあります。
- 時間のロス: 学校から電車で地元に戻り、そこから学童へ移動。冬場など暗くなる時間は防犯上心配です。
- 宿題の格差: 私立小は宿題が多いですが、公立学童は「遊び」がメイン。宿題をする環境が整っていない場合があります。
結論: 公立学童を利用するのは、地域との繋がりが強い場合や、子どもがタフな場合に限られます。
2. 私立小独自の「アフタースクール」事情
近年、共働き家庭をターゲットに、**校内にアフタースクール(学内学童)**を設置する私立小が増えています(例:青山学院、聖徳学園、さとえ学園など)。
- メリット: 移動ゼロで安全。宿題も見てくれる。習い事(ピアノや英語)も校内で完結する。
- デメリット: 設置していない学校もまだ多い。費用は別途かかる。
志望校選びの際、「校内アフタースクールの有無」と「利用可能時間(18時までか、19時までか)」は、共働き家庭にとって偏差値以上に重要なチェック項目です。
3. 最強のソリューション「民間学童」
多くの私立小家庭が選ぶのが、伸芽’Sクラブやリックキッズなどの**「民間学童」**です。
- サービス内容:
- 送迎付き: 学校の門までバスやタクシーで迎えに来てくれ、自宅まで送ってくれる。
- 学習サポート: 宿題の指導に加え、理科実験やプログラミングなどのカリキュラムが充実。
- 食事: お弁当ではなく、手作りの夕食を提供してくれる。
- 費用: 入会金や月謝を含めると、月額5万〜10万円程度かかります。学費に加えてこの出費は痛いですが、「安全と教育」をお金で買う感覚です。
4. 盲点:夏休みなどの「長期休暇」
私立小は休みが多いです。 夏休み、冬休みに加え、「創立記念日」「家庭学習日」「入試休み(在校生は休み)」など、公立にはない休日が多発します。
この時、親が仕事を休めない場合どうするか。 民間学童なら「朝から預かり」に対応していますが、スポット利用の枠が埋まっていることもあります。 入学前に、祖父母の協力や、ファミリーサポート、シッターなどの**「第2、第3の矢」**を用意しておく必要があります。
まとめ:合格後の「ロジ」を組んでおく
「合格してから考えよう」では遅すぎます。 4月1日からいきなり、お弁当作りと送迎生活が始まります。
- 志望校にアフタースクールはあるか?
- 最寄りの民間学童の送迎対象校に入っているか?
- 誰が何時に迎えに行くか?
この**「ロジスティクス(物流・兵站)」**が組めていないと、せっかく合格しても親がパンクしてしまいます。 共働き受験は、合格がゴールではありません。6年間の生活を回し続けるための「持続可能なシステム作り」こそが、真の勝利条件です。


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