はじめに:個別テストの重要性とその特徴
お受験ラボ編集部です。小学校受験では、ペーパーテストに注目が集まりがちですが、実は個別テストの比重が大きい学校も少なくありません。特に立教小学校や学習院初等科などの伝統校では、ペーパーテストを行わず、口頭での個別テストを通じて、思考力や記憶力、コミュニケーション能力を総合的に評価しています。
この記事では、個別テストを重視する代表的な8校を難易度順にランキングし、それぞれの出題傾向や評価ポイント、家庭での具体的な対策方法を詳しく解説します。個別テストの準備に不安を感じているあなたに、実践的なヒントをお届けします。
個別テストとは何か?特徴と評価のポイント
個別テストは、試験官と1対1で行う対話形式の試験です。ペーパーテストと違い、その子の思考過程やコミュニケーション能力、聞く力、言葉で表現する力が直接見える点が特徴です。
個別テストの主な特徴
- 筆記ではなく口頭での回答が中心
- 積み木やパターンブロック、碁石など具体物を使うことが多い
- 試験官とのやり取りの中で追加の質問が出ることもある
- 「わかりません」と正直に答えることも評価される
個別テストが重視される学校ランキングTOP8
1位:成蹊小学校(倍率4.2倍・難易度:最高峰)
特徴:「お話の記憶」が圧倒的に長文で難関
成蹊小学校の個別テストで最も重視されるのは「お話の記憶」です。1000文字を超える長編ストーリーを聞き、その内容について詳細に答えます。これは他校の記憶問題の2~3倍の長さで、集中力や理解力が問われます。
課題パターン
- 長編ストーリーの記憶(3~5分の聞き取り)
- 推理・思考問題(図形の法則性や数量的思考)
- 常識問題(生活経験に基づく知識)
出題例「くまさんのお家でお誕生日パーティーがありました。呼んだのはウサギさん、リスさん。お庭には桜が咲いていました…」と続く話を聞いた後、「誰が呼ばれましたか?」「季節は?」「何番目に起きたことは?」などの質問に答えます。
評価ポイント
- 最後まで集中できる粘り強さ
- 複数の情報を同時に記憶する力
- 物語の因果関係を理解する力
- 正確な言葉遣い(例:「リスさん」と呼ぶ)
成蹊小学校は「粘り強く学ぶ子」を重視しており、難易度の高いお話の記憶を通じて子どもの集中力や理解力、忍耐力を見極めています。
自宅での対策
- 毎日10分、聞き取りを意識した読み聞かせを段階的に(短編から長編へ)
- 読み聞かせ後に「さっきのお話、何が起きた?」と問い返す
- すごろくやボードゲームで「聞く→判断→行動」の流れを日常化
- 児童文学書を週2~3回音読させる
2位:立教小学校(倍率5.8倍・難易度:高)
特徴:「グループ内での個別テスト」で思考力と社会性を同時に評価
立教小学校はペーパーテストを行わず、個別テストで思考力やその場での対応力を評価します。グループの中で個別に行うテストが特徴です。
課題パターン
- 絵を見ながら話を聞き、口頭で答える内容理解
- パターンブロックや積み木を使った造形課題
- 碁石やチップを使った数量・推理問題
- 質疑応答での対応力(例:「わかりません」と言う場面)
出題例
- 「このパターンブロックでタワーを積んで。どの色が何個必要?」
- 絵本を見て「この次はどうなると思う?」
評価ポイント
- 指示を正確に理解し、聞き間違えに気づいて質問できるか
- 思考の柔軟性と試行錯誤する姿勢
- 試験官とのやり取りでのコミュニケーション能力
- 丁寧な扱い(碁石を乱雑にしないなど)
個別テストの時間が長く、思考過程をすべて見られるため、見栄やごまかしが通用しません。
自宅での対策
- 週3回、15分程度のパターンブロックや積み木での造形遊び
- 親が「どうしてそうしたの?」と理由を言語化させる問いかけ
- 「わかりません」と言いやすい家庭環境づくり
- 夕食時に「今日は何が楽しかった?」「どうしてそう思った?」と会話を増やす
3位:学習院初等科(倍率7~8倍・難易度:高)
特徴:「生活態度の個別観察」でしつけや振る舞いを厳しくチェック
学習院初等科の個別テストは知的問題よりも、生活習慣や言葉遣い、所作を重視します。家庭の教育水準が色濃く反映される試験です。
課題パターン
- 巧緻性テスト(紐通し、ボタン付け、着替えなど実際の動作)
- お話作り(3枚の絵を使って物語を作る)
- 短い文章の記憶と口頭説明
- 日常生活の質問(朝の行動や食事のマナーなど)
出題例
- シャツのボタンを留める動作を指示通り丁寧にできるか
- 3枚の絵を見て時系列の物語を作る
評価ポイント
- ゆっくり丁寧に作業できる所作の丁寧さ
- 時系列の言葉の正確さ
- 辞書的に正確な言葉遣い
- 家庭での生活習慣や躾の徹底度
知識よりも家庭の教育方針が試されるため、直前期の詰め込みでは対応が難しい試験です。
自宅での対策
- 食事時に「今日のご飯はどんな味?」と形容詞を使わせる練習
- 衣服の着脱を自分でさせ、動作を言葉で説明させる
- 親が「ゆっくり丁寧に」を示範し、子どもに強要しない
- 兄弟姉妹や祖父母との交流を増やし、敬意を自然に学ばせる
4位:青山学院初等部(倍率9.2倍・難易度:高)
特徴:論理的思考力をペーパーテストと行動観察で総合評価
青山学院初等部はペーパーテストを中心にしていますが、集団テストの中での個別観察も重要視しています。論理的思考力や創造力を評価する傾向があります。
課題パターン
- 図形の回転や推理問題
- 仲間分けと理由付け
- 映像記憶(スクリーン上の図形を短時間見て質問に答える)
出題例
- 「四角い積み木を1回転させたらどう見えるか」
- 「ぶどう、みかん、いちご、マスクの中で仲間外れはどれ?理由は?」
評価ポイント
- 論理的思考力(理由を説明できるか)
- 創造力(即興でお話を作る力)
- 積極性(わからない時に質問できるか)
探究学習を重視しているため、正解だけでなく考え方のプロセスを評価します。
自宅での対策
- 日常的に「なぜ?」と問いかけ、考える習慣をつける
- 折り紙などで平面から立体へ変える図形遊びを多く経験させる
- 親自身が考える姿勢を示し、一緒に考える時間を持つ
5位:昭和女子大学附属昭和小学校(倍率9.0倍・難易度:高)
特徴:質問力と応答力で知的好奇心を評価
昭和女子小学校の個別テストはシンプルですが、その子の知的好奇心や質問力を重視しています。日常会話の中での対応力も見られます。
課題パターン
- 簡単な知識問題だが、答え以上に「なぜ?」という質問が返ってくるか
- 試験官の質問に対して逆質問ができるか
- 雑談を通じた対応力
自宅での対策
- 子どもの質問を歓迎し、「いい質問だね」と肯定的に受け止める環境づくり
- 動物園や科学館での疑問を大切にし、すぐに答えず「あなたはどう思う?」と返す
- 親自身が知らないことを恥ずかしがらず示す姿勢
6~8位の学校群
慶應義塾幼稚舎 個別テストはなく、運動や絵画、行動観察で評価されます。絵画制作後には「何を作りましたか?」と口頭質問があります。
聖心女子学院初等科 個別テストよりもグループでの個別観察を重視し、個々の考えの表現力を見ています。
白百合学園小学校 ペーパーテスト中心で、個別テストは実施されていません。
個別テストの難易度評価マトリックス
学校名 難易度 重視項目 準備期間 家庭準備の難易度 成蹊小学校 ⭐⭐⭐⭐⭐ 記憶力・思考力 12ヶ月 ⭐⭐⭐⭐⭐ 立教小学校 ⭐⭐⭐⭐ 思考・社会性 10ヶ月 ⭐⭐⭐⭐ 学習院初等科 ⭐⭐⭐⭐ 生活態度・言葉 12ヶ月 ⭐⭐⭐⭐⭐ 青山学院初等部 ⭐⭐⭐⭐ 論理的思考力 9ヶ月 ⭐⭐⭐ 昭和女子小学校 ⭐⭐⭐ 質問力・応答力 6ヶ月 ⭐⭐⭐
個別テストで試験官が注目する5つのポイント
①「聞く」姿勢の質の高さ
試験官は子どもが指示を聞く時の目の動きや集中度、わからないことに対してどう質問するかを細かく観察しています。
高評価される聞き方
- 試験官の目を見て話を聞く
- 聞き間違えに気づき「もう一度お願いします」と質問できる
- 「わかりません」と正直に答えられる
低評価となる聞き方
- 下を向いたまま話を聞く
- わかったふりをして不正確に答える
- 黙り込んでしまう
②「思考の過程」が見える表現
個別テストでは正解よりも「どう考えたか」が重要視されます。
例:図形問題での違い
- 低評価:「これです」と指差すだけ
- 高評価:「このブロックをここに回転させるとこう見えるから」と説明しながら答える
③「言葉選び」の正確さ
特に学習院初等科では、子どもの語彙力や言葉の選び方で家庭の国語教育レベルを判断します。
例:色彩表現の差
- 低評価:「黄色」だけで終わる
- 高評価:「黄色とも橙色とも言えるような黄土色」と詳細に表現する
④「失敗への対応力」
わからない問題でも試行錯誤し続ける子は高く評価されます。
良い対応例
- 「あ、違いました。もう一度考えてみてもいいですか」
- 「こうでしょうか。いえ、こうかもしれません」と試行錯誤する
悪い対応例
- 「わかりません」で諦める
- 親の顔を見て助けを求める
⑤「個性が表れているか」
完璧な答えより、その子独自の考え方や表現が自然に出ているかが評価されます。
個別テスト対策:学校別の実践的アプローチ
成蹊小学校志望のあなたへ
- 月に1冊のペースで長編絵本の読み聞かせを習慣化し、聞く力を育てる
- すごろくなどのゲーム時間を徐々に延ばし、集中力を養う
- 長文のお話を聞いた後に「誰が出ていた?」「何が起きた?」と口頭で復習させる
立教小学校志望のあなたへ
- 週3回、15分程度のパターンブロックや積み木遊びを取り入れる
- 親が「なぜ?」を繰り返し問いかけ、理由を言葉にさせる習慣をつける
- 年に数回、間違えても大丈夫という経験を意図的に作る
学習院初等科志望のあなたへ
- 親自身が「ゆっくり丁寧に」を日常で示し、急がせない環境を作る
- 食事や着替え、片付けの動作を言葉で説明させる習慣をつける
- 兄弟や祖父母との交流を増やし、敬語や丁寧さを自然に身につけさせる
よくある失敗パターンとその改善策
失敗パターン1:「完璧さを求めすぎる」
個別テストで失敗しやすい家庭は、親が正解を強く求める傾向があります。思考過程を評価する試験で完璧を求めると、子どもは萎縮し、思考停止に陥りやすくなります。
失敗パターン2:「直前期の詰め込み」
特に学習院初等科では、1ヶ月前からの準備では家庭の教育風土は変わりません。最低でも1年前から、日常生活の見直しが必要です。
失敗パターン3:「個別テスト専用の練習だけに頼る」
幼児教室の個別テスト対策は効果的ですが、それだけでは不十分。日常の親子対話や遊びを通じて自然に思考力を育てることが土台となります。
まとめ:個別テスト合格者に共通する4つのポイント
個別テストで高く評価される子どもには、次の4つの共通点があります。
1. 「聞く」ことに全力を注ぐ
聞き間違えても気づき、質問し、主体的に聞き直す姿勢がある。
2. 思考の過程を言葉で説明できる
「わからない」ではなく、「こう考えたからこうしました」と伝えられる力。
3. 失敗を学びに変える柔軟性
間違えても気持ちを切り替え、次に挑戦する回復力がある。
4. 親との信頼関係が築かれている
家庭で「何を言っても大丈夫」という安心感があり、本番でも自分の考えを表現できる。
個別テストの準備は、直前の詰め込みよりも日常の親子関係を見直す良い機会です。その過程で子どもの思考力が自然に磨かれていくことを忘れないでください。

