こんにちは。お受験ラボの講師です。私は15年間、小学校受験の指導に携わり、数百組の親子をサポートしてきました。今回は、多くの保護者の方が気になる「小学校受験とは何か」「いつから準備を始めるべきか」という疑問に、私の経験をもとにお答えします。
そもそも小学校受験って何をするの?
公立小学校との違い
公立小学校は、基本的に学区内であれば誰でも入学できます。一方で、国立や私立の小学校は入学試験を行い、合格した子どもだけが入学できる仕組みです。
ただし、小学校受験の試験は一般的な国語や算数のテストとは異なります。まだ文字の読み書きが十分でない子どもたちを対象にしているため、独特の内容が特徴です。
実際にどんな試験があるの?
私が15年間で何度も試験会場に同行してきた経験から、小学校受験では主に以下の5つの分野で子どもたちの力が評価されます。
1. ペーパーテスト
数を数えたり、図形を見つけたり、お話を聞いて記憶したりする問題に取り組みます。文字を書くのではなく、丸をつけたり線を引いたりして答える形式です。
例えば、「リンゴが3個、ミカンが2個あります。全部でいくつでしょう。答えの数だけ丸を書いてください」といった問題が出されます。
2. 行動観察
小学校受験の大きな特徴の一つがこの行動観察です。5〜10人程度のグループで自由遊びや共同作業を行い、その様子を先生方が観察します。
「誰かを仲間外れにしていないか」「おもちゃの取り合いの際にどう対応するか」「リーダーシップを取るかサポート役に回るか」など、子どもの社会性や協調性が細かくチェックされます。
3. 運動テスト
かけっこ、ボール投げ、スキップ、ケンケンパ、平均台など、基礎的な運動能力を評価します。運動神経の良さだけでなく、指示をしっかり聞いて動けるか、最後まで諦めずに取り組めるかという姿勢も重要視されています。
4. 巧緻性テスト
ちょうちょ結び、折り紙、ハサミでの切り取り、塗り絵など、手先の器用さや丁寧さをみる課題です。完璧さよりも、一生懸命取り組む姿勢や道具を大切に扱う態度が評価されます。
私が保護者の方に伝えているのは、「ちょうちょ結びがまだできなくても、一生懸命結ぼうとする姿勢があれば問題ない」ということです。
5. 面接
多くの学校で親子面接が行われます。志望理由や子育ての方針、お子さんの長所や短所について質問されます。
学校側は、家庭の教育方針が学校の理念に合っているかを確認したいと考えています。
いつから準備を始めるのがベスト?【よくある質問にお答えします】
15年間で最も多くいただく質問が「いつから準備を始めればいいですか?」というものです。
私が見てきた成功パターン
結論としては、年中(4歳)の11月頃から準備を始めるご家庭が最も多く、合格率も高いと感じています。
この時期に始める理由は、受験本番が年長の秋(10〜11月)なので、約1年半の準備期間が確保できるからです。この期間が、子どもに無理なく力を伸ばせる「ちょうど良い時間」と言えます。
開始時期別のメリット・デメリット
【年少(3歳)〜年中前半スタート】ゆったり派
こんなご家庭におすすめ
- 第一志望が慶應や早実などの超難関校
- 初めての受験で不安が大きい
- 共働きでまとまった時間が取りにくい
実際に指導した感想
早く始めれば必ず有利というわけではありません。3歳から始めて、年長になる頃に「もう疲れた」と感じる子もいます。早期スタートの場合は、遊び感覚で楽しく続けることがポイントです。
【年中(4歳)秋〜冬スタート】王道パターン
こんなご家庭におすすめ
- ほとんどの受験家庭に適している
- バランスの良い準備が可能
実際に指導した感想
私が最もおすすめするタイミングです。この時期の子どもは集中力や理解力が急激に伸びます。「昨日できなかったことが今日できる」という成長を実感しやすく、親子ともにモチベーションを保ちやすいです。
【年中(4歳)春〜夏スタート】やや遅めスタート
こんなご家庭におすすめ
- すでに幼児教育を受けている
- 兄姉が受験経験済み
- 基礎的な生活習慣が身についている
実際に指導した感想
決して遅すぎることはありませんが、計画的に進める必要があります。私の教室でも、年中春スタートで難関校に合格したご家庭が複数あります。
【年長(5歳)春以降スタート】直前集中型
こんなご家庭におすすめ
- 国立小学校のみ受験予定
- ペーパー重視の学校が第一志望
- 基礎力が十分にある
実際に指導した感想
正直、親子ともに大きな負担がかかりますが、不可能ではありません。実際に年長の4月から準備を始めて国立に合格した子もいます。ただし、志望校を絞り込むことが重要です。
年齢別・具体的な準備内容【これをやってください】
年少〜年中前半(3〜4歳)【土台作りの時期】
この時期は「小学校受験のための特別な勉強」は必要ありません。むしろ、日常生活の中で基礎をしっかり固めることが大切です。
私が保護者の方にいつもお伝えしているのは、以下のようなことです。
- 朝は自分で起きて、自分で着替える
- 「おはようございます」「ありがとうございます」といった挨拶を習慣にする
- 食事中の姿勢やマナーを身につける
- 遊んだ後は自分で片付ける
- 絵本の読み聞かせを1日最低1冊行う
- 週に3回以上、外遊びや運動の時間を確保する
- お友達と遊ぶ機会を積極的に作る
これだけで十分です。本当に。
15年間の指導経験で気づいたのは、この「当たり前のこと」がしっかりできている子は、受験勉強を始めてからの伸びが大きく違うということです。
年中後半〜年長前半(4〜5歳)【本格準備の時期】
この時期から、いよいよ受験対策を始めます。
幼児教室選びのポイント
- 大手教室は情報量が豊富で模擬テストが充実している
- 個人教室はきめ細かい指導でアットホームな雰囲気
- 学校別コースは志望校が決まっている場合に適している
私の経験では、最初は週1回の通塾で十分です。複数の教室を掛け持ちするケースもありますが、子どもの負担を考えて慎重に判断してください。
家庭学習の進め方
- 1日30分〜1時間程度を目安に
- できるだけ毎日同じ時間に取り組む
- 「できたね!」という成功体験を大切にする
- できないことを叱らず、励ます
ここで特にお伝えしたいのは、親がイライラしたらすぐに中断することです。15年間で何度も見てきましたが、親子関係が悪化して受験を断念したケースもあります。受験よりも大切なものがあることを忘れないでください。
年長後半(5〜6歳)【総仕上げの時期】
夏期講習や直前講習、模擬面接など、忙しい日々が続きます。
この時期に大切なこと
- 過去問を繰り返し練習する
- 模擬テストで場慣れをする
- 生活リズムを崩さないようにする
- 親が焦りを見せず、落ち着いて接する
特に10月に入ると、周囲の合否情報が耳に入ってきますが、他の子と比べず、あなたのお子さんの成長に目を向けてあげてください。
実際にかかる費用と時間【現実的な話】
費用面
準備期間を約1年半とした場合の費用例です。
- 幼児教室の月謝:月3〜10万円
- 教材費:年間5〜10万円
- 模擬テスト:1回5千〜1万円(月1〜2回)
- 講習会:季節講習で10〜30万円
- 受験料・交通費:5〜10万円
年間総額で80〜200万円程度が目安となります。
超難関校を目指したり、複数の教室に通う場合は300万円を超えることもあります。
時間面
- 子ども:週1〜2回の通塾+家庭学習30分〜1時間/日
- 親:送迎や付き添い、家庭学習のサポート
特にお母さんの時間的負担は大きく、私の教室でも仕事を調整したり、一時的にペースを落としたりするご家庭が多いです。
おすすめ参考図書【講師目線で本当に役立つ本】
15年間で何十冊も読みましたが、特におすすめの本をご紹介します。
【初めての方向け】まずはこの1冊
『小学校受験 大百科2025完全保存版』(プレジデント社)
毎年更新される定番書で、学校情報から準備の進め方まで網羅しています。私も毎年購入し、保護者の方におすすめしています。
【実践対策】問題集はこれ
『ばっちりくんドリル』シリーズ(理英会)
分野別で使いやすく、私の教室でも副教材として活用しています。特に「基礎編」は年中さんから使えます。
『こぐま会 ひとりでとっくん』シリーズ
難関校を目指すなら必須のシリーズです。段階的に難しくなる構成が優れており、親のサポートが必要なので解説をよく読んで進めてください。
【親の心構え】私が何度も読み返した本
『小学校受験を決めたら読む本』(日本経済新聞出版)
具体的で実践的な内容が充実しており、願書の書き方や面接対策も参考になります。
『「お受験」の経済学』(ディスカヴァー携書)
受験の意義を冷静に考えさせてくれる一冊です。悩んだときに読むと視野が広がります。
【学校研究】志望校選びに
『首都圏 国立・私立小学校進学のてびき』(ジャック幼児教育研究所)
各校の詳細データや試験内容、進学実績まで網羅しており、志望校を絞り込む際に役立つ必携書です。
最後に:15年間で学んだ最も大切なこと
15年間、多くの親子を見てきて気づいたことがあります。
合格した家庭に共通しているのは、子どもが楽しそうに取り組んでいたことです。
「受験勉強=苦しいもの」となってしまった家庭は、たとえ合格しても入学後に「勉強嫌い」になってしまうケースもあります。
小学校受験は、子どもの成長の一つのステップに過ぎません。親子で楽しく準備を進めることが、合格への一番の近道だと私は考えています。
このブログでは、今後も現場の声を交えながら、小学校受験に役立つ情報をお届けしていきます。ご質問があれば、どうぞお気軽にコメントしてください。
一緒にがんばりましょう。
お受験ラボ 講師より


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