こんにちは。お受験ラボ編集部です。15年間、小学校受験の現場で講師を務めてきた私が、今日は少し意外かもしれない話をお伝えします。
それは、合格したからといって必ずしも幸せになれるわけではないという現実です。
逆に、不合格でも前向きに成長できる家庭がたくさんあるという事実もあります。
「何のために受験したのだろう…」と、志望校に合格したにもかかわらず後悔の表情を浮かべるお母さんの姿は、今でも私の心に深く残っています。一方で、全ての志望校に落ちたにもかかわらず、「最高の経験でした!」と笑顔で話してくれた親子もいました。
この両者の決定的な違いはどこにあるのでしょうか。15年間で数百組の親子を見てきた経験から見えてきた、本当に大切なポイントをお伝えします。
合格したのに後悔してしまう家庭に見られる典型的なパターン
パターン①: 学校と家庭の価値観や環境が合わないケース
Aさん家庭の例(憧れの名門校に合格)
都内の超難関校に合格したAさんの息子さん。しかし、入学からわずか3ヶ月で相談に来られました。
「毎朝、息子が『学校に行きたくない』と泣くんです…」
話を聞くと、その学校は想像以上に規則が厳しく、自由奔放な性格の息子さんには合わなかったのです。憧れだけで学校を選んでしまったことを、Aさんは後悔していました。
他にもよくあるケース:
- 宗教教育が予想以上に厳しく、子どもが息苦しそうにしている
- 保護者の活動が多く、仕事との両立が難しい
- 通学時間が片道1時間以上で、子どもが疲れ切っている
パターン②: 合格をゴールと考え、その後の生活を見誤るケース
Bさん家庭の例(一貫校に合格)
Bさんは「これで大学まで安心」と安心していましたが、入学後に内部進学の厳しい条件を知ります。成績が悪いと外部受験を余儀なくされるのに、受験準備が終わった子どもは勉強習慣を失っていました。
結果的に小学4年生から塾通いを始め、「最初から公立で中学受験した方が良かった」と感じるようになりました。
このパターンの特徴:
- 合格したことで気を抜いてしまう
- 入学後の学習の厳しさを甘く見ている
- 周囲の優秀な子どもたちとの差にショックを受ける
- 「せっかく入ったのに」という思いが子どもを追い詰める
パターン③: 経済的・時間的負担を過小評価してしまうケース
Cさん家庭の例(共働き家庭)
年収800万円あれば大丈夫と考えていたCさん。しかし、学費以外にも多くの費用がかかることに驚きました。
- 制服や教材費
- 寄付金(任意だが断りづらい雰囲気)
- 交通費
- 学校行事のたびにかかる費用
- 保護者同士の付き合いにかかる費用
- 塾や習い事の費用(周囲が通っているため必要になる)
年間で約200万円近い支出となり、「家計が回らない」と感じるように。さらに、保護者会や行事で仕事を休むことも増え、職場での立場も厳しくなりました。
落ちても前向きに成長できた家庭に共通するポイント
ケース①: 不合格を学びの機会と捉えた家庭
Dさん家庭のストーリー
3校すべて不合格だったDさんの娘さんは、「どうして合格できなかったの?」と涙を流しました。
しかし、お母さんの対応が素晴らしかったのです。
「あなたは本当によく頑張ったね。落ちたのではなく、この学校とはご縁がなかっただけ。頑張った力は決して消えないよ」
この家庭では「不合格」という言葉を使わず、前向きな声かけを続けました。
娘さんは公立小学校に進学し、受験で培った力でクラスのトップ成績を収め、生徒会長にも選ばれました。
小学3年生の今、「あの時頑張ったから今の自分がある」と話しています。
ケース②: 公立小学校の良さを再発見した家庭
Eさん家庭のストーリー
全ての志望校に落ちて地元の公立小学校へ通うことになったEさんのお母さんは、最初は「負け組」と感じていました。
しかし実際に通ってみると、
- 徒歩5分の通学で子どもが楽になった
- 放課後に友達とたっぷり遊べる時間がある
- 多様な家庭環境の子どもたちと触れ合える
- PTAの負担が私立より軽い
- 浮いた学費で習い事を充実させられた
「私立じゃないとダメ」という思い込みが薄れ、公立の良さを実感するようになりました。
ケース③: 中学受験で再チャレンジし成功した家庭
Fさん家庭のストーリー
小学校受験で不合格だったものの、「次は本人の力で」と中学受験を目指しました。
小学校受験で培った
- コツコツ勉強する習慣
- 諦めない心
- 親子で目標に向かう経験
これらが中学受験で大いに役立ち、結果的に小学校受験で落ちた学校の系列中学に本人の実力で合格しました。
今では「小学校で落ちてよかった」と笑顔で話しています。
15年間の経験から見えた「後悔する家庭」と「成長する家庭」の決定的な違い
違い①: 「結果」だけを見るか、「過程」を大切にするか
後悔する家庭の傾向:
- 合格・不合格という結果だけに注目する
- 結果で子どもの価値を判断してしまう
- 不合格を失敗と捉えがち
成長する家庭の特徴:
- 努力した過程をしっかり認める
- 結果に関わらず子どもの成長を喜ぶ
- 不合格を貴重な経験と捉える
私が見てきた中で最も幸せそうな家庭は、結果よりも過程を重視している家庭でした。
違い②: 「見栄」か「本質」を見ているか
後悔する家庭:
- 「◯◯小学校に通わせている」というステータスを重視する
- 周囲の目を過度に気にする
- 親の満足のために受験をしている
成長する家庭:
- 「この子に何が必要か」を第一に考える
- 子どもの適性を見極める努力をする
- 子どもの幸せのために受験を考える
15年間の経験から、親の見栄で始めた受験は、どこかで必ず歪みが生じると感じています。
違い③: 「完璧主義」か「柔軟性」を持っているか
後悔する家庭:
- 「私立じゃないとダメ」と固執する
- プランBを用意していない
- 公立を軽視している
成長する家庭:
- どの選択肢にも良さがあると理解している
- 状況に応じて柔軟に対応できる
- 公立小学校でも子どもは十分に育つと信じている
実際、公立小学校から東大に進学する子どもも多くいます。学校の種類よりも、家庭の関わり方が重要なのです。
違い④: 「子ども不在」か「子ども中心」か
後悔する家庭:
- 親が決めた学校を子どもに押し付ける
- 子どもの気持ちを十分に聞かない
- 親の願いが優先されている
成長する家庭:
- 子どもの意見も尊重する
- 「この子に合っているか」を常に考える
- 子どもの幸せを最優先に考える
5歳や6歳の子どもに全てを決めさせるのは難しいですが、子どもの気持ちを無視していないかどうかは常に確認すべきです。
あなたの家庭は大丈夫?価値観チェックリスト
以下の質問に正直に答えてみてください。
【危険信号】こんな考えはありませんか?
□ 「不合格だったら恥ずかしい」と感じる
□ 「◯◯小学校に通わせている」と言いたい
□ 公立小学校を軽視している
□ 「合格すれば安心」と思い込んでいる
□ 子どもより自分の方が受験に熱心
□ 夫婦間で受験への温度差がある
□ 「せっかく入ったのに」が口癖になりそう
□ 費用面を楽観的に考えている
3つ以上当てはまるなら、注意が必要です。
【健全なマインド】こんな考えはありますか?
□ 結果よりも子どもの成長を喜べる
□ 不合格でも得るものがあると信じている
□ 公立小学校の良さを理解している
□ 入学後の生活をリアルに想像している
□ 子どもの幸せを何より大切にしている
□ 夫婦で教育方針を共有している
□ 「この子に合っているか」を常に考えている
□ 経済的な計画をしっかり立てている
7つ以上当てはまれば、素晴らしい状態です。
後悔しないために今できること
入学前に取り組むべきポイント
1. 学校を徹底的にリサーチする
- 説明会には必ず参加する
- 在校生の保護者の本音を聞く
- 学校の雰囲気を実際に感じ取る
- 良い面だけでなく、大変な面も確認する
2. 経済的なシミュレーションを行う
- 6年間の総費用を計算する
- 想定外の出費も考慮に入れる
- 「払えるか」ではなく「無理なく払えるか」を見極める
3. 通学のシミュレーションをする
- 子どもと一緒に通学路を歩いてみる
- ラッシュ時の混雑具合を確認する
- 6年間続けられるかイメージする
不合格だった場合の備え
1. プランBを用意しておく
- 公立小学校の情報も集めておく
- 「不合格=終わり」ではないと理解する
- 家族で次の選択肢について話し合う
2. 子どもへの声かけを準備する
- 「不合格」という言葉を使わない
- 努力を認める言葉を用意する
- 「これからが楽しみ」と前向きな姿勢を伝える
3. 親自身の気持ちの整理をしておく
- 落ち込む時間を持ちつつ、子どもの前では明るく振る舞う
- 夫婦で支え合う
- 「縁がなかった」と受け入れる準備をする
最後に:小学校受験の本質とは何か
15年間、数百組の親子を見てきて、私が確信していることがあります。
受験の価値は合格・不合格の結果ではなく、その過程にこそあるということです。
合格しても不幸な家庭がある一方で、不合格でも幸せな家庭はたくさんあります。
この違いは、親が何を大切にしているかで決まります。
- 結果より過程を重視する
- 見栄より本質を見つめる
- 完璧主義より柔軟性を持つ
- 親の願いより子どもの幸せを優先する
これらを忘れなければ、どんな結果でも家族は必ず成長できます。
受験は子どもの成長の「機会」であり、人生の「分岐点」ではありません。
合格してもしなくても、その先には長い人生が続きます。
大切なのは、子どもが自分らしく幸せに生きていけることです。
受験を通じて親子の絆が深まるなら、それが最高の「合格」だと私は考えています。
おすすめ参考図書:親の心を整えるための本
受験に臨む前、そして結果が出た後にもぜひ読んでいただきたい本をご紹介します。
【受験前に読む本】
『子どもが伸びる関わり方』(青春出版社)
受験の本質を教えてくれる一冊。親が何を大切にすべきかを改めて考えさせられます。
『「小学校選び」の後悔しないコツ』(日経BP)
学校選びの失敗例が豊富に掲載されており、冷静な判断を助けてくれます。
【不合格だった時に読む本】
『失敗図鑑』(文響社)
偉人たちの失敗エピソードを集めた本。子どもと一緒に読むことで、失敗を恐れなくなります。
『折れない心をつくる シンプルな習慣』(日本実業出版社)
不合格のショックから立ち直るヒントが満載。親のメンタルケアにも役立ちます。
【合格後に読む本】
『中学受験 基本のキ!』(日経BP)
私立小学校に入学しても多くの家庭が直面する中学受験について、早めに知っておくと心の準備ができます。
『私立小学校の歩き方』(晶文社)
入学後の現実的な情報が豊富で、理想と現実のギャップを埋めてくれる実用書です。
【親子で読む本】
『どんなに失敗しても「ま、いっか」と思える本』(PHP研究所)
完璧主義の親にこそ読んでほしい一冊。肩の力が抜けて楽になれます。
お受験ラボより
15年間で私が学んだ最も大切なことは、合格・不合格よりも、親子で一緒に頑張った思い出の方がずっと価値があるということです。
もし不安なことがあれば、いつでもコメントでご相談ください。
あなたのご家庭が、受験を通じてより幸せになれることを心から願っています。

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