お受験ラボ編集部です。今回は、実際に小学校受験で合格を勝ち取った共働き家庭5組に、どのような工夫を重ね、どのタイミングで判断を変え、親としてどのように乗り越えたのかを詳しく伺いました。この記事を通じて、これから受験に挑むあなたが、現実的な準備の道筋や親としての覚悟を理解できるようにまとめています。
はじめに:共働き家庭の小学校受験は「不利」ではなく「効率的な工夫」が鍵
共働き家庭の小学校受験準備は確かに「時間が限られている」という制約があります。しかし、合格を掴んだ家庭に共通しているのは、その限られた時間を工夫と効率化で乗り切っている点です。
本記事では、5つの具体的な家庭事例を通じて、「現実的に何が可能か」「何を優先し、何を手放すべきか」といった親としての判断軸を示していきます。
家庭事例1:「1年で難関校合格」フルタイム共働き・東京都内・倍率12倍の難関私立小合格
家族構成
- 父親:金融機関勤務(フルタイム)
- 母親:IT企業勤務(フルタイム)
- 子ども:年長男児(受験時6歳)
志望校決定の分岐点
受験準備を「年長の秋から1年で進める」と決めた背景には、「中学受験の過熱化を避けたい」という親の思いがありました。共働きで中学受験をサポートするのは難しいと判断し、早期に私立小学校で進路を確保する戦略を選択しています。
時間管理の工夫
- 朝5時起床(親子ともに)
- 朝学習時間:6時30分~7時(30分)でペーパーの難問に集中
- 帰宅後学習時間:18時30分~19時30分(60分)で復習や面接対策
- 週末は塾の模試と親子で志望校の過去問分析
受験直前の「最強の時間術」
受験2ヶ月前の夏には、毎朝5時に起きて、妻が面接官、夫が親役の模擬面接を実施。妹も「集団行動テストのお友達役」として参加し、家族全員で受験に向き合う体験が子どもの集中力を高めました。
費用配分
- 塾代:月50,000円 × 12ヶ月 = 600,000円
- 夏期講習・特別講習:150,000円
- 模試:50,000円
- 合計:約800,000円
親のメンタルヘルス
母親は「時間がない焦りから子どもに怒ることが増えたが、親の不安が子どもに伝わるのは逆効果」と気づき、意識的に静かに見守る姿勢に切り替えました。その結果、親子ともに気持ちが楽になったと語っています。
合格後のコメント
「1年で合格できたのは、短期集中の覚悟と家族全体の協力があったから。専業主婦家庭との時間差はあるが、共働き家庭の効率化力が最大の武器だった」と振り返っています。
家庭事例2:「保育園からの逆転合格」共働き・神奈川県・理英会系列の人気校に合格
家族構成
- 父親:公務員(フルタイム、帰宅時間が遅い)
- 母親:医療職フルタイム(シフト勤務)
- 子ども:年中から受験準備(年長時に合格)
受験を決めた分岐点
保育園に通っているため学区内の小学校との連携がなく、受験を検討。中学受験を見据えた教育環境というより、保育園児だからこそ親の教育観を整理する必要があるという気づきが出発点でした。
時間管理の現実
- 朝は時間的余裕がなく朝学習はできず
- 帰宅後はシフト勤務で毎日の学習時間が変動
- 週末は親が協力できる時間が非常に限られている
「塾が主役」という戦略
朝晩の自宅学習が難しいため、塾(理英会)の実験型学習に全面的に委ねる方針に。親は塾の講師を信頼し、家庭では面接対策に注力する役割分担を決めました。
祖父母の活用
母方の祖母が週3回、塾への送迎と帰宅後の軽い復習を担当。親が全てを担うのではなく、祖父母に期待できる役割を明確にしたことで、親の負担を大幅に軽減しました。
願書・面接対策
月1回の家族会議で子どもの大切にしていることや親の教育観を言語化。これが願書作成や面接対策に直結しました。
合格を勝ち取った最大の工夫
「完璧を目指さない」という親の決定が鍵。朝学習なし、週末の学習時間も限定的という不利な条件を受け入れ、面接対策に特化することで合格を掴みました。
家庭事例3:「兄妹同時受験」で判断を迫られた共働き家庭・東京都・女子伝統校に兄妹同時合格
家族構成
- 父親:商社勤務(転勤の可能性あり)
- 母親:コンサルタント(仕事量が多い)
- 子ども:兄(年長・6歳)と妹(年中・5歳)
兄妹同時受験という選択の分岐点
当初は兄だけの受験を想定していたが、妹が「お兄ちゃんと同じ学校に行きたい」と言ったため同時受験を決定。親は負担増を懸念したものの、兄妹で励まし合うことで親の負担がむしろ減るという予想外の結果に。
親の役割の完全分離
- 父親:兄の面接対策(週3回、平日夜1時間)
- 母親:妹のペーパー対策(週2回、朝15分)
親が全てを担当するのではなく、兄妹それぞれに親を割り当てることで負担を最小化しました。
兄妹間での「学習の相乗効果」
妹が兄の行動観察の練習に付き合い、お友達役として自然に学習。兄は妹の面接対策を手伝うことで自身の理解も深まり、子ども同士の相乗効果が生まれました。
受験準備を「後回し」にしなかった判断
妹の年中時に兄の受験に専念し、妹は年長で受験する選択肢もあったが、同時に取り組む覚悟を決めたことで効率化が進みました。
「落ちたらどうする?」への親の覚悟
兄妹両方が合格する確実性はないため、「兄が合格し妹が不合格の場合」も想定。親はそれでも良いと受け止め、子どもの道を信頼する決断が心理的余裕を生みました。
結果的に兄妹同時合格を果たしましたが、「合格が全てではなく、受験準備の過程で家族が一つになった経験が最大の価値」と語っています。
家庭事例4:「仕事を調整しなかった」共働き家庭・神奈川県・洗足学園小学校に合格
家族構成
- 父親:建築設計事務所経営(仕事量多く帰宅遅い)
- 母親:デザイナー(フリーランスで時間調整が比較的容易)
- 子ども:年長女児(受験時6歳)
「仕事は調整しない」という親の判断
他の家庭と異なり、仕事を減らしたり有休を取ったりせずに受験に臨みました。理由は「親が受験ストレスで疲弊しては本末転倒」という価値観からです。
シッターの本格活用
塾の送迎や帰宅後の軽い復習をシッターに全面委託。月約30,000円の費用は「親の精神的負担を減らすための投資」として判断しました。
夫婦の役割を「完全に分離」
- 母親:面接対策、願書作成(月1回の夫婦会議で方針相談)
- 父親:週末の体験学習(公園での観察、季節行事参加)
受験対策と日常生活での学びを分けることで、親の仕事と受験の両立が可能になりました。
「得意分野に特化」という戦略
母親のデザイナーとしての強みを活かし、工作対策に注力。他の分野は塾に任せる判断をしました。
合格のカギ
「受験に合わせて人生を変えない」という親の姿勢が子どもの心理的余裕につながりました。多くの家庭が受験期を全て受験優先にする中で、普通の生活を守る判断が子どもをリラックスさせたのです。
家庭事例5:「共働き+実家も遠い」最難関条件での合格・東京都・慶應義塾幼稚舎合格
家族構成
- 父親:大手製造業勤務(転勤族、帰宅遅い)
- 母親:専門職(時短勤務切り替え:週4日約30時間)
- 子ども:年長男児(受験時6歳)
- 祖父母:遠方在住でサポート不可
最も難しい条件での受験準備
共働きで祖父母のサポートもなく、倍率12倍の慶應幼稚舎を志望。一見合格は難しい条件でしたが、工夫で実現させました。
ターニングポイント:母親の時短勤務切り替え
受験準備開始3ヶ月後、母親が週5日フルタイムから週4日・時短勤務に切り替え。月収は約25%減りましたが、受験準備に必要な投資と判断しました。
「シッター+宅配サービス」への思い切った投資
- シッター:週3回、塾送迎と帰宅後の学習見守り(月40,000円)
- 食事宅配:週4日の夕食外注(月20,000円)
手作り料理や自炊という理想を一時手放し、受験準備の1年間は親の体力温存と子どもへの良い関わりを優先しました。
最難関校向けの面接対策の工夫
週末は家族全員で慶應幼稚舎の過去問分析。父親も忙しい中、面接対策から外れず、限られた時間を活用して家族で対話の習慣を作りました。
受験直前の「覚悟の時間」
試験2ヶ月前の9月に夫婦で合格確率や不合格後の対応を話し合い、親の覚悟を固めました。その落ち着きが子どもに伝わったと感じています。
合格の秘訣
完璧な準備ではなく、限られた条件の中で親が判断と覚悟を決めたことが合格につながりました。面接では一貫した教育観と親の子どもへの信頼が評価されたと学校からのフィードバックを受けています。
5つの家庭に共通する成功のポイント
✅ ポイント1:「受験準備の優先順位を決め、他は割り切る」
合格した5家庭に共通するのは、「完璧な家事」「完璧な仕事」「完璧な受験準備」を同時に追い求めなかったことです。
- 家事のクオリティを50%程度に下げる
- 仕事は「調整する」か「調整しない」かを明確に決める
- 外注サービス(シッター、食事宅配)への投資を決断する
✅ ポイント2:「親の役割を明確に分担する」
複数の親がいる場合は、「父親は面接、母親はペーパー対策」など役割を完全に分けることで、1人あたりの負担を減らし、親同士の衝突も避けられます。
✅ ポイント3:「親の精神的負担を軽減することが子どもの成績向上につながる」
親が焦りや疲れを抱えていると、子どもはそのストレスを敏感に感じて学習への集中力が落ちます。逆に親が落ち着いて静かな状態でいることが、子どもにとって最良の学習環境となります。
✅ ポイント4:「『落ちたらどうする?』を事前に話し合う」
受験前に不合格の場合の対応を夫婦で話し合うことで、親の心理的準備ができ、その落ち着きが子どもにも伝わります。逆に「絶対合格」という執着は親子関係を歪めることがあります。
✅ ポイント5:「受験は『家族が一つになる経験』として捉える」
合格が全てではなく、受験準備の過程で親子や夫婦、兄妹が一つの目標に向かって協力する経験こそが、実は最大の価値です。合格後に振り返ると「受験があって良かった」と感じる家庭が多いのもそのためです。
受験に失敗した家庭から学ぶ「避けるべき陥穽」
本記事では合格した家庭の事例を紹介しましたが、共働き家庭で不合格に終わったケースも少なくありません。そうした家庭に共通する問題点は以下の通りです。
❌ 陥穽1:「親が疲弊しすぎて子どもの状態を見守れない」
例として「親が疲れているから今日は勉強を休む」という状況が続くと、親のペースで受験準備が進み、子どもの学習リズムが定まりません。
❌ 陥穽2:「シッターに全て任せて親が進捗を把握していない」
シッターは見守りやサポート役であり、教える役ではありません。親が子どもの進捗を把握しなければ、弱点が見えず対策が遅れてしまいます。
❌ 陥穽3:「夫婦間で役割分担がなく衝突が起きる」
「あなたが見てくれるから私は仕事に集中する」という暗黙の期待が夫婦関係を損ない、その不和が子どもに伝わります。

