小学校受験は本来、お子さまの可能性を伸ばすための準備期間です。しかし、親の関わり方次第で、逆に成長の芽を摘んでしまうこともあります。しかも多くの場合、親御さんは「良かれと思って」行動しているため、気づきにくいのが難しいところです。
私は15年以上、小学校受験指導に携わり、多くのご家庭を見てきました。その経験から、確実に子どもの成長を妨げてしまう親のNG行動を5つに絞り、それぞれの理由と改善策をお伝えします。ぜひ参考にして、より良い関わり方を目指してください。
◆NG行動① 完璧を求める声かけが子どもの自己肯定感を削る
小学校受験で最も多い落とし穴の一つが、完璧さを求める声かけです。
- 「なんでできないの?」
- 「昨日はできたよね?」
- 「お友だちはできてたよ」
こうした言葉は叱責ではなく、知らず知らずのうちに子どもの自己肯定感を削り取る“毒”になってしまいます。
受験校が重視しているのは、結果の正確さだけではなく、“伸びしろのある子かどうか”です。
完璧を求める声かけを続けると、
- 失敗を過度に恐れる
- 正解がわからないと動けなくなる
- 新しい課題に挑戦しなくなる
このような状態は、試験の行動観察で「挑戦できない子」と見なされ、不利になることが多いのです。
改善策
「できた?」ではなく、「やってみようか」「その考え方いいね」と声をかけ、挑戦すること自体に価値を置く言葉に切り替えましょう。これだけで子どもの姿勢が大きく変わります。
◆NG行動② 先取り学習に偏りすぎて考える力を奪う
家庭でよく見られる誤解が、「足し算・引き算や難しいペーパーを先取りすれば有利になる」というものです。
しかし、先取りで点数を取れても、本番で伸び悩むケースが多いのが現実です。
その理由は、
「知っている問題」だけ解ける子は、未知の課題に対応する力が育ちにくいからです。
行動観察では必ず初めて見る課題が出され、そこで“思考の柔軟性”“粘り強さ”“工夫する力”が評価されます。
先取りをしすぎると、未知の課題に直面したとき「知らない=できない」と短絡的に考え、そこで止まってしまうことが多いのです。
改善策
先取り学習よりも、
- 図形パズル
- お話の記憶
- 模倣遊び
- 折り紙や工作
- 運動
など、脳の基礎を育てる活動を重視しましょう。これが確実に子どもの伸びにつながります。
◆NG行動③ 他の子と比較し続けることの弊害
親御さんが最もやりがちで、かつ危険なのが子ども同士の比較です。
比較には主に2つの悪影響があります。
① 子どもが自分を“順位”でしか評価できなくなる
これは自己肯定感の低下に直結します。
② 親が焦り、誤った学習方針を選びやすくなる
「うちの子だけ遅れている」と感じ、必要のない塾や教材に手を出し、かえって負担を増やす家庭も少なくありません。
小学校受験は「早くできる子」が勝つ試験ではなく、“6歳で完成している子”ではなく、“6歳から伸びる子”を選ぶ試験です。
ゆっくり育つ子ほど後から伸びることが多く、比較はその芽を摘む最悪の行動と言えます。
改善策
「昨日の自分と比べる」以外の比較はやめましょう。家庭の空気が変わり、子どもの成長が促されます。
◆NG行動④ 親の緊張や焦りを子どもに伝えてしまう
小学校受験を経験した子どもの中には、“親の顔色を伺って育つ子”が一定数います。
多くの場合、親御さん自身が強い緊張やプレッシャーを抱えており、その空気を子どもが敏感に感じ取ってしまうのです。
子どもは大人の表情や声のトーン、空気感に非常に敏感です。
- 親が不安だと子どもも不安になる
- 親が焦ると子どもも焦る
- 親がピリピリした空気を出すと子どもは動けなくなる
その結果、本番で本来の力を発揮できずに終わってしまうケースも少なくありません。
改善策
家庭内の空気を「挑戦してもいい」「失敗しても大丈夫」という雰囲気に統一しましょう。これが本番に強い子を育てる最短の道です。
◆NG行動⑤ 子どもの“好き”や興味を奪うこと
受験勉強に集中させようとして、次のようなことをしていませんか?
- 習い事をすべてやめさせる
- 外遊びを減らす
- 机の勉強ばかりに偏らせる
これは成長の芽を摘む最大のNG行動です。
好きなことを奪われた子は、学ぶ意欲も同時に失ってしまいます。しかも、行動観察で求められる
- 創造力
- コミュニケーション能力
- 協調性
- 発想の豊かさ
は、机の上だけでは育ちません。
むしろ、好きな遊びや興味のある活動こそが、「その子らしさ」=学校が最も見たいポイントなのです。
改善策
受験のために何かを削るのではなく、
子どもの興味を広げる方向で生活を整えましょう。これが本物の成長につながります。
■まとめ|子どもの芽は「守る」ことで伸びる
小学校受験は詰め込みで合格できる試験ではありません。むしろ、詰め込みすぎると失敗しやすい試験です。
今回ご紹介した5つのNG行動は、すべて家庭の空気から生まれます。
① 完璧要求
② 先取り偏重
③ 比較
④ 親の緊張コピー
⑤ 好きを奪う
これらが一つでも重なると、子どもの成長力は確実に弱まります。逆に、これらを避けている家庭は、本番で驚くほど強くなるのです。


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