こんにちは。小学校受験専門メディア「お受験ラボ」編集部の私です。慶應義塾には、小学校入学のルートとして「慶應義塾幼稚舎」と「慶應義塾横浜初等部」の2つがあります。どちらも慶應義塾の名を冠していますが、教育方針や環境、入試の特徴は大きく異なります。
「両方受験すべき?」「どちらを選べば後悔しない?」と悩む保護者の方も多いでしょう。そこで今回は、入試制度や学費、進学先、親御さんの負担など4つの観点から両校の違いを詳しく比較し、ご家庭に合った選び方のヒントをお伝えします。
1. 【基本スペック】歴史と校風の違いを知る
まずは両校の基本情報を整理しましょう。幼稚舎は1874年創立の伝統校で、渋谷区に位置。横浜初等部は2013年開校の新しい学校で、横浜市にあります。
| 項目 | 慶應義塾幼稚舎 | 慶應義塾横浜初等部 |
|---|---|---|
| 場所 | 東京都渋谷区(広尾・恵比寿) | 神奈川県横浜市(江田・あざみ野) |
| 創立 | 1874年(日本最古の私立小学校) | 2013年(最新設備を備える) |
| 定員 | 男子96名 / 女子48名 | 男子66名 / 女子42名 |
| 担任制度 | 6年間持ち上がり制で担任が変わらない | 一般的なクラス替えあり |
| 教育のキーワード | 独立自尊・伝統・「まず獣身」 | 独自の教育・体験学習・ICT活用 |
幼稚舎:伝統と自由を大切にする校風
幼稚舎では6年間同じ担任が子どもを見守り、まるで第二の家庭のような温かさと強い結束があります。細かな校則に縛られず、一人ひとりの個性や自由を尊重する教育が特徴です。
横浜初等部:体験学習とICT教育を融合
横浜初等部は慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)と連携し、田んぼ作りや野外活動などの体験学習を積極的に取り入れています。ICT教育も充実し、新しい教育の可能性を追求する校風です。
2. 【入試】ペーパーテストの有無が最大の違い
受験対策で特に注目すべきは、ペーパーテストの有無です。ここが両校の大きな分かれ目です。
幼稚舎:ペーパーテストなし、行動観察や制作が中心
幼稚舎の入試には筆記試験がありません。子どもの地頭の良さは、絵画の説明や行動観察を通じて評価されます。計算ドリルなどのペーパー対策は不要ですが、表現力や運動能力を伸ばす準備が重要です。
横浜初等部:一次試験にペーパーテストあり
横浜初等部では一次試験にペーパーテストが課されます。お話の記憶や図形、常識問題などが出題され、しっかり対策しないと二次試験(行動観察・運動)に進めません。ペーパーが苦手なら幼稚舎を専願する家庭も多いですが、横浜初等部志望ならペーパー対策は必須です。
3. 【親の負担】給食かお弁当かで変わる毎日の負担感
入学後の生活で保護者の負担に大きく影響するのがランチ事情です。
幼稚舎:ホテルニューオータニの給食が利用可能
幼稚舎には食堂があり、温かい給食が提供されます。毎朝のお弁当作りから解放されるため、共働き家庭や忙しい保護者にとっては大きなメリットです。
横浜初等部:原則お弁当持参、親子の時間を大切に
横浜初等部は原則としてお弁当持参です(牛乳のみ学校から支給)。親子でお弁当を通じた関わりを大切にする方針ですが、6年間毎日お弁当を作るのはかなりの覚悟が必要です。
4. 【進路】中学校進学のルートに大きな違いがある
大学は慶應義塾大学が目標ですが、中学校進学のルートに男女別で違いがあります。特に男子の場合は注意が必要です。
幼稚舎からの進学先
幼稚舎卒業後は男女で進学先が異なります。男子は普通部(日吉)、中等部(三田)、湘南藤沢中等部(SFC)から選択可能で、成績優秀な男子は伝統ある普通部を志望する傾向が強いです。女子は中等部か湘南藤沢中等部へ進学します。
横浜初等部からの進学先
横浜初等部は原則全員が湘南藤沢中等部(SFC)へ進学します。普通部や中等部への進学は原則認められていません。SFC中等部は共学で、大学キャンパスに隣接した環境で一貫教育が続きます。そのため、「将来は普通部(男子校)に進学させたい」と考えるなら、横浜初等部は進学ルートから外れることになります。
5. 【併願戦略】両校の受験は可能?負担と対策のポイント
日程が重ならなければ、幼稚舎と横浜初等部の併願は可能です。多くの受験生が挑戦していますが、対策の負担はかなり増えます。
幼稚舎対策は模倣体操や絵画、願書の福翁自伝の理解など独特の準備が必要です。横浜初等部対策は高いレベルのペーパーテスト対策、サーキット運動、願書のSFC理念理解が求められます。
両方を安易に受けると準備の負担で共倒れになるリスクもあります。お子さんの得意分野(運動が得意か、ペーパーが得意か)を見極め、どちらに軸足を置くかを決めることが合格への大切なポイントです。
まとめ:伝統の幼稚舎か革新的な横浜初等部か
慶應義塾幼稚舎に向いているご家庭
- 伝統やブランド力を重視する
- 給食がある方が助かる
- ペーパー学習より感性や運動能力を伸ばしたい
- 男子で普通部への進学を希望する
慶應義塾横浜初等部に向いているご家庭
- 新しい設備や自然体験、ICT教育に魅力を感じる
- 親子でお弁当を通じた関わりを大切にしたい
- ペーパーテストに自信がある
- 男女共学でSFCの環境で大学まで育てたい
どちらも「独立自尊」の精神を共有していますが、6年間の過ごし方は大きく異なります。偏差値や倍率だけでなく、「6年間、親子でどう過ごしたいか」を基準に選ぶことが重要です。あなたのご家庭にとって最適な選択ができますよう、心から願っています。


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