小学校受験の中でも特に注目される「慶應義塾(幼稚舎・横浜初等部)」と「早稲田実業学校初等部」。通称「早慶」と呼ばれ、どちらも人気の高い名門校ですが、入試の内容や校風、求められる家庭像は実に異なります。まるで水と油のような違いがあるのです。
両校を「とりあえず両方受ける」というご家庭も多いですが、対策の方向性が大きく異なるため、どちらにも中途半端になってしまうリスクがあります。この記事では、慶應幼稚舎・横浜初等部と早稲田実業の入試や校風、進路の特徴を多角的に解説し、あなたのご家庭に合う学校選びのヒントをお伝えします。
1. 入試内容の違い|慶應は身体能力重視、早稲田は総合力を問う
両校の最大の違いは、選考で重視するポイントです。
慶應義塾(幼稚舎):「ペーパーなし」の独特な試験
- 試験内容:行動観察、運動、絵画・制作のみで、ペーパーテスト(筆記試験)はありません。
- 重視する点:「地頭の良さ」と「個性の輝き」、そして強靭な体力を見ています。
- 対策のポイント:塾のペーパー対策だけでは合格は難しいです。指示を正確に理解し独創的な発想を持つこと、そして何千倍もの倍率を勝ち抜くための運やオーラも必要になります。
早稲田実業:「オールマイティな力」が求められる
- 試験内容:難関のペーパー試験に加え、行動観察、運動、面接があります。
- 重視する点:高い知能と生活力の両方を評価します。
- 対策のポイント:ペーパーは最難関レベルです。さらに雑巾がけや衣服の畳み方など、生活習慣の完成度も問われるため、細部まで抜かりなく準備する必要があります。
2. 校風の違い|慶應は「独立自尊」、早稲田は「去華就実」
両校の校訓は、そのまま生徒や保護者の雰囲気を表しています。
慶應:「独立自尊」の華やかさと個性重視
- 生徒:先生は細かく指示せず、生徒の自主性を尊重します。個性が強く輝く子どもが好まれます。
- 保護者:三田会という強い結束力があり、保護者同士の交流も華やかで愛校心が強いのが特徴です。
- 進路:成績に関わらず、ほぼ全員が慶應義塾大学へ進学可能です。ただし医学部進学は狭き門となっています。
早稲田:「去華就実」の質実剛健な校風
- 生徒:「華やかなものを去り、実に就く」という校訓通り、実用的な学びや努力を重んじます。慶應に比べると庶民的でバンカラな気風が残っています。
- 保護者:教育熱心で堅実な家庭が多い傾向です。
- 進路:早稲田大学への推薦枠はありますが全員確約ではありません。医学部がないため、医師志望のご家庭は注意が必要です。
3. 親の関わり方の違い|面接の有無が戦略の分かれ目
親御さんの出番が大きく異なるのも特徴です。
- 慶應幼稚舎:親の面接はありません。願書の作文(「福翁自伝」を読み込んだ独自の内容)が合否を左右します。親が直接学校にアピールできる場がないため、願書の完成度が非常に重要です。(※慶應横浜初等部は面接があります)
- 早稲田実業:親子面接が非常に重要です。父親・母親・本人の3人で臨み、親の教育方針が学校の理念と合致しているか厳しく見られます。
4. 判定:あなたの家庭はどちらに向いている?
慶應向きの家庭
- 子どもが運動能力に優れている、または絵画などで突出した才能がある。
- 親御さん自身が学校行事や同窓会の交流を楽しめるタイプ。
- 細かい勉強よりも体験や感性を重視して子育てしたい。
早稲田向きの家庭
- 子どもがコツコツ努力するタイプで、ペーパー学習も苦にしない。
- 親御さんが「質実剛健」の校風を好み、派手なものを好まない。
- 勉強だけでなく、挨拶や整理整頓など生活習慣の躾をしっかりしている。
まとめ:併願は可能でも「軸」を決めて対策を
「早慶」というブランドだけで選ぶのはおすすめできません。慶應は「天才肌・スター性」を求め、早稲田は「努力家・秀才」を求めています。
もちろん両校の併願は可能ですが、対策にかける時間や労力の配分を明確にしないと、どちらも中途半端になりかねません。ペーパー対策に注力するのか(早稲田)、絵画や運動に力を入れるのか(慶應)、お子さまの特性を見極めて戦略を立てることが合格への近道です。私も多くのご家庭を見てきましたが、現実は厳しい部分もありますが、正しい準備と心構えで道は開けます。ぜひ冷静に判断してください。


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