はじめに:行動観察は練習ではなく日常の習慣です
お受験ラボ編集部です。小学校受験の行動観察対策について、多くの親御さんは「塾で週1回、1時間の集団レッスン」というイメージを持ちがちです。しかし実際には、行動観察で最も重要なのは、家庭での普段の過ごし方にあります。
学校側は、塾で練習された行動よりも、その子の自然な姿を見ています。つまり、家庭で自然に育まれた協調性や思考力、感情のコントロール力が高く評価されるのです。本記事では、毎日10分程度の時間で取り組める30のトレーニングパターンを紹介します。ぜひ、無理なく継続して取り入れてください。
行動観察で評価される5つの力とは?
まずは、学校側が行動観察で何を見ているのかを理解しましょう。これを踏まえて家庭でのトレーニングを計画することが大切です。
① 協調性:他者の気持ちに寄り添えるか
② 課題解決能力:与えられた課題に自分で工夫して取り組めるか
③ 感情コントロール:失敗や悔しさに直面した時に気持ちを切り替えられるか
④ 主体性:指示を待つのではなく自分から行動できるか
⑤ コミュニケーション力:相手と会話しながら思いを伝え理解できるか
カテゴリー別|自宅でできる30の行動観察トレーニング
【協調性を育むゲーム】(7パターン)
1. ボードゲーム(オセロ・すごろく・UNO)
- 毎週末、家族で1時間ゲームの時間を設ける
- 負けた時の態度や悔しさの処理の仕方を観察する
- 共働き家庭は日曜夜に15分×2回でも効果的
2. 「順番を守る」練習
- 誰がどの順番かを全員で確認し明確にする
- 自分の順番が来るまでの過ごし方を観察
- 待っている間に他の人をサポートする行動があるかを見る
3. 「グループで一つのものを作る」ゲーム
- みんなで一緒に積み木で家を作るなどの共同作業
- 自分のやりたいことよりグループの目標を優先できるか
- 自然に役割分担が生まれるかを観察
4. 音楽に合わせた動き
- 音楽が流れている間、ダンスをする
- リズムに乗り他の人の動きを見ながら自分の動きを調整できるか
- 照れずに表現できるかも評価ポイント
5. 親子でのボール遊び
- キャッチボールやボール運びリレーを楽しむ
- 相手の投げ方を観察し、どう返すか判断できるか
- 相手が失敗しても責めず励ましながら続けられるか
6. 「相談して決める」練習
- 「今日の晩ご飯は何が食べたい?」と家族で相談して決める
- 自分の意見を伝えつつ他人の意見も聞く力を育てる
- 意見が対立した時に折り合いをつける経験を積む
7. 「困った時に手を差し伸べる」練習
- 親がわざと困った様子を見せ、子どもの対応を観察
- 「ママが重いものを持っているけど、手伝える?」と声をかける
- 相手のニーズを察して主体的に行動できるか
【課題解決能力を育むトレーニング】(8パターン)
8. 積み木・パターンブロックでの自由構成
- 「どんな形を作る?」と指定せず自由に作らせる
- 最初のアイデアや途中の工夫、失敗からの修正を観察
- 親は評価するだけでアドバイスは控える
9. パズル(年齢より少し難しいもの)
- ピースが合わない時の試行錯誤の様子を見守る
- 親に助言を求めるか、自分で考え続けるかを観察
- 完成後に「工夫したところは?」と振り返り話す
10. 「失敗から学ぶ」設計のゲーム
- ボードゲームで負けた時に「次はどうしたらいい?」と問いかける
- ただ遊び直すのではなく、なぜ負けたかを考えさせる
11. 「材料から何かを作る」
- 古い雑誌や厚紙、綿など決められた材料でロボットなどを作る
- 「これではダメ」と別の方法を考える柔軟な思考を促す
- 制限の中で創意工夫できるかを見る
12. 「問題を発見して解決する」練習
- おもちゃが壊れた時にどう対処するか子どもに考えさせる
- 親は答えを示さず、子ども自身に複数の解決策を考えさせる
13. 「制限時間内にやり遂げる」
- 「10分でお片付けをしよう」と時間を意識させる
- 時間配分やスピード感を持って行動できるか
- 諦めず最後までやり遂げる粘り強さを育てる
14. 「大人と子どもで一緒に課題を解く」
- 親が困った顔をして「ここが分からない、一緒に考えて」と頼む
- 子どもが大人を助ける経験を通じて自信と主体性を育む
15. 「作ったものを説明する」練習
- 積み木で作った作品について「これは何?」と質問する
- 自分の意図を相手に分かりやすく伝える力を養う
- 試験官の質問への回答練習にもなる
【感情コントロールと折り合いをつける練習】(7パターン)
16. 「自分と相手のやりたいことが違う」ゲーム
- 例えば赤い積み木を両方使いたい時にどうするか考えさせる
- 「順番こしよう」「一緒に使おう」など解決案を子どもから引き出す
17. 「意図的に負ける」
- 親がわざと子どもに負けて喜びと配慮のバランスを観察
- 相手を思いやりながら自分の喜びも感じられるかを見る
18. 「うまくいかなかった時の対応」練習
- 子どもの企画したゲームがうまく進まない時に一緒に考える
- 親は提案せず、子ども自身に別の方法を考えさせる
19. 「兄弟姉妹間の公平性」
- リーダー役を交代制にして公平感を育てる
- 自分がリーダーでない時に相手を尊重できるか
- 兄妹で一緒に何かを作る経験も大切
20. 「友達とのトラブルを見守る」
- 友達と遊んで意見が対立しても親は介入せず見守る
- 子どもたちが自分たちで解決する経験を積む
- 失敗を通じてコミュニケーション力が育まれる
21. 「親に助言を求める」練習
- 困った時に「ママ、分からなくなった」と言える安心感を作る
- 親が「いい質問だね」と褒めることで質問することを良いことと認識させる
22. 「我慢する経験」
- 「今はゲームをしたいけどご飯の時間だから待とうね」と伝える
- 欲求を遅らせ社会的ルールを理解する力を育てる
【指示行動・聞く力を育むトレーニング】(5パターン)
23. 複数の指示を一度に聞いて行動する
- 「おもちゃをここに置いて、靴を揃えて、手を洗ってね」と3つの指示を出す
- 順序を覚えて正しく実行できるか
- 聞き間違えた時に「もう一度お願いします」と質問できるか
24. 指示の意図を理解して応用する
- 「積み木でタワーを作って」と指示し、「一番高く」「安定している」などの意図を読み取れるか
25. 音声指示を聞いてすぐに行動する
- 「ストップ」と言われたらすぐに止まる
- 聞く姿勢や反応速度を観察する
26. 説明を聞いてから試行錯誤する
- ゲームのルール説明を聞いて自分で実行する
- 理解できたか、疑問があれば質問できるかを確認
27. 大人の見本を見て真似をする
- 親が動きを見せて「同じようにしてみてね」と伝える
- 観察力と模倣能力を育てる
【主体性・リーダーシップを育むトレーニング】(3パターン)
28. 「今日の遊びは何がいい?」と子どもに決めさせる
- 毎日親が決めるのではなく、子ども自身に選ばせる
- 主体的に選ぶ経験が小学校での主体性につながる
29. 「ママ、一緒にやって」と子どもがリードする
- 子どもが親を導く立場になる経験を積む
- リーダーシップを発揮できるかを育てる
30. 「失敗してもまた挑戦する」を繰り返す
- ボール投げで失敗しても「もう一回やってみよう」と励ます
- 粘り強さや挑戦心、失敗からの回復力を育てる
実践ガイド:年齢別の進め方
年少(3歳)~年中(4歳)期
実施頻度:週3~4回、各15分程度
対象パターン:1~7(協調性重視)、23~27(聞く力)
重点:親と一緒に遊ぶ喜び、簡単なルールの理解
具体例・月曜日のスケジュール
- 夕食後15分:オセロ(1パターン)→負けた時の感情を言葉にする
- 水曜日:親子でボール遊び(5パターン)→相手を思いやる気持ちを育む
- 土曜日:積み木で自由構成(8パターン)→工夫を褒める
年中(4歳)~年長(5歳)期・前半(春~夏)
実施頻度:週4~5回、各20分
対象パターン:全30パターンを循環
重点:課題解決能力、感情コントロール、主体性
具体例・1週間のスケジュール(共働き家庭向けコンパクト版)
曜日 朝(5分) 夜(15分) 月 なし オセロ(1パターン) 火 なし 新ルールのすごろく工夫(10パターン) 水 なし ボール遊び(5パターン) 木 なし パターンブロック自由構成(8パターン) 金 なし 「共働きで疲れた日」は休息 土 散歩中の観察(自然観察→会話) 家族ゲーム(16パターン) 日 なし 親子で課題作成(14パターン)
年長(5歳)期・後半(秋~冬)
実施頻度:週5回、各20~25分
対象パターン:前期の内容をより難しく応用
重点:塾の行動観察レッスンとの連動
具体例:10月のメニュー(試験前3ヶ月)
週ごとにテーマを設定して取り組みます:
- 第1週:協調性強化週間(パターン1~7を繰り返す)
- 第2週:課題解決能力週間(パターン8~15に集中)
- 第3週:感情コントロール週間(パターン16~22に集中)
- 第4週:統合週間(苦手分野を重点的に強化)
よくある失敗パターンとその対策
失敗1:「やりすぎ」による疲弊
❌ NG例:毎日1時間、全パターンを塾で習った通りに実行する
✅ 対策:週4~5回、各15~20分で十分です。大切なのは質よりも継続。無理のない量を設定しましょう。
失敗2:「親が正解を教えてしまう」
❌ NG例:「この積み木は立たないから、こっちを使ったら?」と指導する
✅ 対策:「どうしたらいいと思う?」と問い返すこと。失敗も学びの一部と捉えましょう。
失敗3:「完璧を求めすぎる」
❌ NG例:「昨日できたのに今日はできなかった」と落ち込む
✅ 対策:子どもは毎日違う気分であることを理解し、その日の状態を受け入れてあげてください。
失敗4:「受験対策であることを子どもに意識させる」
❌ NG例:「試験に向けて行動観察の練習をしようね」と言う
✅ 対策:「今日は何して遊ぼうか」という感覚で、ただの遊びとして取り組みましょう。試験との関連は隠すことがポイントです。
共働き家庭向け|最小限で最大効果のおすすめプラン
忙しい共働き家庭は、以下の3つのパターンに絞って取り組むことをおすすめします。
パターン1:週1回・ボードゲーム(オセロ)
- 負けた時の気持ちの切り替えを学ぶ
- 相手を思いやる心を育てる
- 協調性の基本が凝縮されている
パターン2:週2回・積み木での自由構成
- 課題解決能力を育む
- 工夫や創意性を促す
- 制作課題への対応力も養える
パターン3:週1回・親子で対話(夕食時)
- 「今日楽しかったことは?」と話す
- 「困ったことはなかった?」と気持ちを聞く
- コミュニケーション力を育てる
このシンプルな組み合わせで、月4回のボードゲーム、月8回の積み木遊び、そして毎日の親子対話を通じて、行動観察の基礎がしっかり身につきます。
まとめ:行動観察トレーニングの本質とは
行動観察対策で最も大切なのは、「その子がありのままの自分を親の前で自然に表現できること」です。
親が「良い子」を演じさせようとすると、子どもは緊張して本来の力を発揮できません。逆に、家庭で自然に協調性や課題解決能力、感情コントロールが育まれていれば、試験本番でもその子らしさがしっかり表れます。
紹介した30のパターンは、単なる試験対策ではなく、親子で楽しむ時間や子どもが主体的に動く経験の積み重ねです。受験が終わった後も、この習慣は子どもの人生の大きな財産となるでしょう。
春から秋にかけて、焦らず無理なく、家庭のペースで進めてください。その先に自然な形での行動観察合格が待っています。

