お受験ラボ編集部の私です。今回は、小学校受験で得点差がつきやすい「運動テスト」と「指示行動」について詳しく解説します。多くの親御さんはペーパーテストに注力しがちですが、実は運動テストで合否が左右されるケースも少なくありません。この記事では、運動テストで何が評価されているのか、どのように対策すればよいのかを具体的なトレーニング方法とともにご紹介します。
はじめに:運動テストで見られているのは「運動能力」ではなく「姿勢と態度」
小学校受験の運動テストに関して、よくある誤解があります。それは「運動が得意な子が合格する」という考えです。実際には、学校側が重視しているのは以下の3点です。
① 指示を正確に聞き取る力
② 指示通りに行動できるかどうか
③ できない時の対応力と諦めない姿勢
つまり、単に運動が得意なだけでなく、「指示をしっかり聞き、最後まで粘り強く取り組む子」が高く評価されるのです。
運動テストと指示行動の違いとは?
運動テストの特徴
- 内容:身体を動かす基礎的な能力を測る
- 評価ポイント:跳ぶ・投げる・バランスなどの基本的な運動能力
- 形式:個別テスト(体育館やホールで実施)
- 重視される点:できるかどうかよりも、指示を聞いて一生懸命取り組む姿勢
指示行動の特徴
- 内容:複数の指示を聞き、それを正確に実行する力を測る
- 評価ポイント:聞く力・理解力・実行力・判断力
- 形式:個別または集団テスト
- 重視される点:指示を正確に聞き、その通りに行動できるか
例:
- 運動テスト:「ケンケンしてください」
- 指示行動:「赤い線まで走ってから、ケンケンして、青い線でジャンプして、元の場所に戻ってください」
指示行動の方が複数の指示を同時に処理する力が求められます。
運動テストで必須の種目と自宅でできるトレーニング法
【基礎体力】ケンケン(片足跳び)
評価されるポイント:
- バランス感覚
- 疲れても続ける粘り強さ
- 指示への集中力
自宅での練習方法:
- 毎日5分程度、リビングなどで練習する
- 最初は3回から始め、徐々に10回、往復20回へと増やす
- 疲れても「もう1回」と声をかけて粘り強さを育てる
難易度を上げる工夫:
- 床にテープで目印を貼り、その上でケンケンする
- ケンケンしながら手を挙げるなど複合動作を加える
【基礎体力】スキップ・走る
評価されるポイント:
- リズム感
- 指示に対する反応速度
自宅での練習方法:
- 週2~3回、公園で走ったりスキップしたりする
- 音楽に合わせて体を動かし、リズム感を養う
【バランス感覚】平均台の上での動き
評価されるポイント:
- バランス感覚
- 慎重さと決断力のバランス
自宅での練習方法:
- 畳の端や床にテープで線を引き、綱渡りの練習をする
- 本来は塾の体操コースで習うが、自宅でも工夫次第で対応可能
【手眼協調】ボールの的当て
評価されるポイント:
- 投げる力
- 集中力と手と目の協調性
自宅での練習方法:
- 壁に的を貼り、ボールを投げる練習を毎日5分行う
- 距離や的の大きさを変えて難易度を調整する
- 例えば、1メートルから3メートルの距離で的を小さくするなど段階的に対策
【手先の器用さ】ボール運び(スプーン使用)
評価されるポイント:
- 手先の器用さ
- バランス感覚
自宅での練習方法:
- スプーンやお玉でピンポン玉を運ぶ練習をする
- 障害物を避けながら運ぶなど難易度を調整する
- 制限時間内に運べるかどうかのスピード感も評価される
【模倣能力】体操(先生の真似)
評価されるポイント:
- 観察力
- 運動の再現能力
自宅での練習方法:
- 親が簡単な動作をして「真似してみてね」と声かけし、毎日練習する
- 腕を上げる、しゃがむ、寝転ぶなど複合動作を加える
【全身運動】クマ歩き・クモ歩き
評価されるポイント:
- 全身の運動能力
- 指示の理解度
自宅での練習方法:
- リビングでクマ歩き(手と足で進む)を練習する
- 最初は5歩から始め、徐々に往復に増やす
- テレビを見ながら親子で一緒に取り組むと楽しく続けられる
指示行動の対策は「聞く力」が鍵
指示行動で最も重要なのは「聞く力」です。運動能力が高くても、指示を聞き逃すと減点対象になります。
よくある出題パターン
基本型:「赤い線まで走ってください」
応用型:「赤い線まで走ってから、3回跳んで、元の場所に戻ってください」
複合型:「赤い線まで走ってから、3回跳んで、青い線でジャンプし、両手を挙げたまま元の場所に戻ってください」
複数指示を処理するコツ
親が日常生活の中で「複数の指示」を出す練習を繰り返すことが、最も効果的な対策です。
例:家庭での声かけ
- 「靴下を脱いで、靴を脱いで、手を洗ってきてください」
- 「おもちゃを片付けて、おやつを食べて、歯を磨いてください」
こうした「3つの指示を同時に処理する習慣」が、指示行動対策の基本となります。
学校別の運動テスト難易度と出題傾向
学校 難易度 重要度 頻出種目 特徴 慶應義塾幼稚舎 ⭐⭐⭐ 中程度 基本体操、ケンケン 指示行動を重視 早稲田実業初等部 ⭐⭐⭐ 中程度 複合運動、指示運動 複雑な指示が特徴 立教小学校 ⭐⭐⭐⭐ 高い 平均台、バランス 男児教育のため運動重視 女子伝統校(東洋・聖心) ⭐⭐ 低い 基本体操 優雅さ・姿勢を重視 学習院初等科 ⭐⭐⭐ 中程度 基本体操、ケンケン 基本的な能力で十分 洗足学園小学校 ⭐⭐⭐⭐ 高い 複合運動、指示行動 全分野バランス型
自宅で毎日できる運動トレーニング30パターン
Aグループ:基礎体力(毎日実施)
- ケンケン(片足跳び):10回 ×3セット
- スキップ:往復1回
- 腕立て伏せ(親子で):5回
- 腹筋(仰向けで上体起こし):10回
- しゃがみ込み:10回
- 階段上り(運動量調整):上り下り1往復
- ジャンプ(両足):10回
- ジャンプ(高く):5回
- 背伸び(つま先立ち):10秒キープ
- 前転(危険なため親のサポート必須):1回
Bグループ:バランス感覚(週3~4回)
- 綱渡り(床のテープの上で):往復1回
- 片足立ち:右足10秒、左足10秒
- つま先歩き(かかとを上げて):往復1回
- かかと歩き(爪先を上げて):往復1回
- 目を閉じて片足立ち:5秒
- ボール運び(スプーン使用):往復1回
- 平均台上でのしゃがみ:5回
- 平均台上での横歩き:往復1回
- 風呂場での滑らないマット上での片足立ち:左右各10秒
Cグループ:投擲・手眼協調(週2~3回)
- ボール投げ(的に向かって):10回
- バスケット投げ(カゴにボールを入れる):10回
- 壁当てボール:10回
- ボール的当て(的を小さくして):5回
- ボール投げ(遠く):5回
- ボール蹴り(サッカー):10回
Dグループ:模倣・複合動作(毎日)
- 親の真似をする(手を挙げる、しゃがむ):5パターン
- クマ歩き:往復1回
- クモ歩き:往復1回
- 両手を挙げながら歩く:往復1回
- 複合動作(走ってから3回跳ぶ):3回
よくある失敗例と改善策
❌ 失敗1:「運動が得意だから対策は不要」と考える
運動が得意な子が合格すると誤解しがちですが、実際には指示を聞き、粘り強く取り組む姿勢が評価されます。
✅ 改善策:
- 得意な運動でも毎回指示をしっかり聞く習慣をつける
- 塾の運動テストでも姿勢を意識させる
❌ 失敗2:「できない時にすぐ親が助ける」
子どもがケンケンで転んだ際にすぐ駆け寄るのは親心ですが、試験官からは過保護と見られます。
✅ 改善策:
- 転んでも自分で起き上がるよう促す
- 失敗を乗り越える経験を日常生活で積ませる
❌ 失敗3:「複数指示をまとめて言う習慣がない」
親が「靴を脱いで、手を洗ってきて」と言っても、子どもが一つだけしか実行しないことがあります。
✅ 改善策:
- 毎日3つの指示を同時に出す声かけを習慣化する
- 子どもが全て実行できたか確認する習慣をつける
❌ 失敗4:「待機時間の態度が悪い」
運動テストは個別形式が多く、待っている間の態度も評価対象です。騒いだり動き回ったりすると減点されます。
✅ 改善策:
- 家庭で順番を待つ練習をする(兄弟の順番を待つ、駅で親の後について待つなど)
- 待っている間は静かに周囲を観察する習慣をつける
親が見落としがちな運動テストのポイント
ポイント1:「服装」も評価される
試験当日の服装について、学校は以下の点を見ています。
- 動きやすさ
- 清潔感
- 過度なアクセサリー(髪飾りや靴など)がないか
共働き家庭では当日の服装準備を忘れがちなので、朝に動きやすい服を用意してあげることが大切です。
ポイント2:「靴」の選び方
- 本番では運動靴(スニーカー)が指定されることが多い
- デザインが派手すぎると個性的すぎると見られる可能性がある
- 黒・紺・白の無地スニーカーが無難
ポイント3:「待機時間の親のサポート」
試験直前の待機時間中、親ができることは限られています。
- ❌ 「頑張ってね」と何度も励ますのはプレッシャーになることも
- ✅ 「いつも通りやってみようね」と平常心を保たせる声かけが効果的
運動テスト・指示行動の勉強時間の目安
年中期
- 週2~3回、各15分の運動トレーニング
- 公園での外遊びを週2回以上取り入れる
- 合計:週150~200分程度
年長期(秋までの期間)
- 毎日15~20分の運動トレーニング
- 公園での外遊びを週2回以上継続
- 塾の体操コース(週1回、60分)を活用
- 合計:週300~350分程度
年長期(秋から冬)
- 毎日15~20分の運動トレーニングを継続
- 塾の体操コース(週1回、60分)を続ける
- 志望校の過去問を参考にした練習を取り入れる
- 合計:週300~350分程度
まとめ:「運動テスト」は子どもの性格や生活力を測る試験
ペーパーテストが「知識」や「思考力」を測るのに対し、運動テストや指示行動は「その子の性格」や「親の関わり方」、「ストレスへの対応力」を見ています。
学校が本当に知りたいのは、聞く力があり、親の指導に素直に従い、失敗しても粘り強く頑張れる子です。これは小学校入学後に必要な生活スキルでもあります。
日々の生活の中で、親が複数の指示をしっかり与え、子どもが最後まで粘り強く取り組む習慣を育てることが、運動テスト・指示行動で高得点を取る最も確実な方法です。


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