筑波大学附属、お茶の水女子大学附属、東京学芸大学附属など、学費が安く教育レベルの高い国立小学校は、私立を上回るほどの高倍率となっています。
しかし、国立小学校の受験には、どんなに努力しても避けられない厳しい壁があります。それが「抽選(くじ引き)」です。
「我が子の未来をくじで決めるなんて理不尽だ」と感じる親御さんも多いでしょう。この記事では、国立小学校特有の抽選システムの仕組みと、親としてどう向き合い、メンタルを保つかについてお伝えします。
1. なぜ国立小学校には抽選があるのか?
私立小学校にはない抽選が、国立小学校に存在する理由は主に2つあります。
- 事務処理の限界による足切り: 人気のある国立小学校には数千人もの志願者が集まります。限られた教員数で全員のペーパーテストや行動観察を実施するのは物理的に不可能です。そのため、試験を受ける人数を絞るために抽選が行われます。
- 多様な子どもを無作為に集める使命: 国立小学校は大学の教育研究のための実験校です。特殊な才能を持つ子どもばかりを集めるのではなく、多様な子どもたちを無作為に抽出して研究を行う必要があります。そのため、完全な実力主義にはできません。
2. 学校によって異なる抽選のタイミング
抽選が行われるタイミングは学校ごとに違い、そのため受験戦略も複雑になります。
パターンA:試験前に行われる抽選(一次抽選)
- 代表例: 筑波大学附属、お茶の水女子大学附属(年による)、学芸大竹早など。
- 特徴: 願書提出後すぐに抽選があり、ここで外れると試験を受けることすらできません。準備をどれだけ積んでも試験会場に入れない、最も厳しいパターンです。
パターンB:試験後に行われる抽選(最終抽選)
- 代表例: 学芸大世田谷、学芸大小金井、お茶の水(年による)など。
- 特徴: ペーパーや行動観察などの試験を通過した合格候補者の中で、最後に抽選が行われます。実力は認められたのに運で落ちるため、精神的に辛いパターンです。
パターンC:筑波方式の複合型抽選
筑波大学附属は特殊で、一次抽選(足切り)→二次試験(実力テスト)→三次抽選(最終決定)と、入り口と出口の両方に抽選があります。実力と強運の両方が求められるため、合格は非常に難しいです。
3. 親が知っておきたい「運」との向き合い方
努力が報われない可能性がある現実に、親はどのように心を保てばよいのでしょうか。
鉄則①:「国立小は宝くじ付きの実力テスト」と割り切る
国立小学校を第一志望にするのはリスクが高いです。私立や公立など確実な進路を確保したうえで、「当たればラッキーな記念受験」と位置づけるのが、精神的に健全な考え方です。過度な期待は落選時のショックを大きくします。
鉄則②:子どもに「くじ」の話は控える
子どもは親の不安を敏感に感じ取ります。「くじで決まる」と話すと、「練習しても意味がない」とやる気を失うことがあります。子どもには「〇〇小学校に合格するためのクイズ大会があるんだよ。楽しみだね」と伝え、大人の事情は伏せておきましょう。
4. 抽選で落ちた時の親の対応が子どもの心を左右する
残念ながらご縁がなかった場合、親の振る舞いが子どもの傷の深さを決めます。
- やってはいけないこと: 子どもの前で泣く、学校の悪口を言う、「運が悪かったね」と嘆くこと。子どもは「自分のせいで親が悲しんでいる」「自分は運が悪い子だ」と自己否定してしまいます。
- やるべきこと: 落選をさらっと受け止め、「今回は残念だったけれど、〇〇くんがこれまで頑張ってきたことはパパもママも知っているよ。すごいことだよ」と努力の過程をしっかり認めてあげることが大切です。
まとめ:合否は運でも、子どもの成長は確かなもの
国立小学校の抽選は親の力ではどうにもならない部分です。そこに一喜一憂するのではなく、「この受験を通じて子どもが身につけた習慣や力」に目を向けてください。机に向かう習慣、人の話を聞く力、最後までやり抜く心など、これらはくじ引きで消えることはありません。
どの小学校に進んでも、これらの力は必ず子どもの糧になります。人事を尽くして天命を待つ。国立小受験は、親の胆力が試される場でもあるのです。


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