お受験ラボ編集部の私です。今回は、小学校受験で多くの学校が重視する「ペーパー試験」について、単元ごとの攻略法と学校別の難易度傾向を詳しく解説します。ペーパー試験は単なる暗記テストではなく、思考力や聞く力、処理速度を総合的に測る試験です。この記事では、6つの主要単元ごとに解き方のポイントやよくある失敗例、さらに学校ごとの特徴もお伝えします。ぜひ参考にして、効率的な対策を進めてください。
はじめに:ペーパー試験で求められる力とは?
小学校受験のペーパー試験は、単なる知識の確認ではありません。以下の5つの力をバランスよく測っています。
①聞く力(リスニング)
問題文は放送で読み上げられます。複雑な指示を正確に聞き取る力が不可欠です。
②理解力(読解)
聞いた内容を正しく理解し、「何をすべきか」を判断する力が求められます。
③思考力(推理・分析)
与えられた条件から論理的に答えを導き出す力です。
④処理速度(スピード)
40~60分で30~50問を解くため、素早く正確に問題を処理する能力が必要です。
⑤集中力
試験の最後まで集中力を維持するメンタルの強さも重要です。
ペーパー試験の6つの主要単元と効果的な攻略法
【単元1:数量(足す・引く・比較・分配)】
出題パターンの例
基礎:足し算・引き算(全学年共通)
- 「りんごが3個あります。1個食べました。残りは何個でしょう?」
- 「ボールが2個あります。3個もらいました。合わせていくつでしょう?」
応用:差を求める問題(難関校で出題)
- 「赤いボールは5個、青いボールは2個あります。赤と青では何個多いでしょう?」
- 「Aさんはお菓子を4個持っています。Bさんは7個持っています。BさんはAさんより何個多いですか?」
発展:分配・等分(最難関校で出題)
- 「12個のお菓子を3人で等しく分けました。1人何個ずつもらいましたか?」
- 「9個のボールを3つのかごに入れます。どのかごにも同じ数だけ入れてください」
学校別の傾向
- 慶應義塾幼稚舎:複雑な差を求める問題が多い
- 早稲田実業初等部:分配・等分の理解度を重視
- 学習院初等科:基礎から応用まで段階的に出題
数量が苦手な子に多い失敗例:問題文を最後まで聞かずに答える、足す・引くの判断ミス、具体物を使わず頭の中だけで計算しようとする
攻略のポイント
- おはじきや積み木など具体物を使って毎日練習する
- 同じ問題を異なる表現で繰り返し出題し、足す・引くの判断力を養う
- 答えを出した後に「なぜそうなったのか」を説明させる習慣をつける
【単元2:図形(同じ図形・重ね図形・鏡絵・回転)】
出題パターンの例
基礎:同じ図形を探す(全学年共通)
- 「左の四角と同じ形を右の5つの中から選びなさい」
- 「提示された三角形と、回転しても同じ形を選びなさい」
応用:重ね図形(難関校で出題)
- 「2つの図形が重なっています。隠れている部分も含めて全体の形を選びなさい」
- 「四角と三角が重なっています。見える部分から全体を推測して答えなさい」
発展:鏡絵・回転(最難関校で出題)
- 「このお花を鏡に映すとどう見えますか?」
- 「このサイコロを右に回転させるとどう見えますか?」
学校別の傾向
- 慶應義塾幼稚舎:鏡絵問題が頻出、特に複雑な鏡写し
- 早稲田実業初等部:回転と線対称の組み合わせ問題
- 東洋英和女学院小学部:平面図形中心、立体図形は少なめ
- 立教小学校:積み木の組み立てなど立体図形の応用問題
図形が苦手な子に多い失敗例:紙の図形だけで判断しようとする、鏡や回転の概念が理解できていない、時間をかけすぎて次に進めない
攻略のポイント
- 鏡を使って実際に鏡写しを体感させる
- 積み木やブロックで立体図形を作り、回転の感覚を養う
- まずは確実に理解することを優先し、慣れてきたらスピードアップを目指す
【単元3:記憶(形の記憶・位置の記憶・お話の記憶)】
出題パターンの例
基礎:形の記憶(全学年共通)
- 「5つの図形を見て、その後隠されます。見た図形を順番に選びなさい」(6問程度)
- 記憶時間は15秒~30秒程度
応用:位置の記憶(難関校で出題)
- 「4つの動物がいます。どこにいるか覚えてください」
- 隠された後に「ウサギはどこにいましたか?」と複数質問される
発展:お話の記憶(全難関校で最重要)
- 「約400字の物語を聞いた後、以下の質問に答えます」
- 登場人物は誰でしたか?
- 最初に何が起こりましたか?
- 主人公の気持ちはどうでしたか?
- 物語の順序を並び替えなさい
学校別の傾向
- 慶應義塾幼稚舎:感情の読み取りを含む複雑なお話の記憶
- 早稲田実業初等部:物語の時系列理解を重視
- 女子伝統校(聖心・雙葉・白百合):登場人物の心情を深く問う
- 学習院初等科:基本的な理解ができれば良い(過度な応用はなし)
記憶が苦手な子に多い失敗例:覚えようと必死になりすぎてストレスになる、家庭で読み聞かせの習慣がない、聞いた話を自分の言葉で説明する練習が不足している
攻略のポイント
- 毎日の絵本の読み聞かせ後に親子で物語の内容について話し合う習慣をつける
- 読み聞かせ後に「この本はどんなお話だった?」と子どもに説明させる
- 形の記憶は毎日5分程度、繰り返し練習して習慣化する
【単元4:言語(語彙・しりとり・反対言葉・音の一致)】
出題パターンの例
基礎:語彙・物の名前(全学年共通)
- 「この絵は何ですか?」(野菜、乗り物、道具など)
- 「『た』で始まる物は?」(カテゴリーから選ぶ)
応用:しりとり・音の一致(難関校で出題)
- 「『りんご』の『ご』で始まる言葉を選びなさい」
- 「『ぎゅうにゅう』と最初の3文字が同じ言葉はどれでしょう?」
発展:反対言葉・類義語(最難関校で出題)
- 「『大きい』の反対は?」
- 「『走る』と意味が同じ言葉は?」
学校別の傾向
- 東洋英和女学院小学部:言語問題が全体の20~30%を占め、最重視
- 白百合学園小学校:言葉の意味の理解度を深く問う
- 聖心女学院小学部:敬語を含む高度な言語問題
- 男子校(慶應・早実):言語より図形・数量を重視
言語が苦手な子に多い失敗例:語彙が少なく物の名前が出てこない、しりとりの概念が理解できていない、親の会話が指示的で対話的でない
攻略のポイント
- 日常生活で意識的に物の名前を教え、語彙を増やす
- 家族でしりとりをゲーム感覚で楽しむ
- 親が「魚」を見たら「これは『さかな』だね。『さかな』の『な』で始まる言葉は?」と対話的に声かけする
【単元5:常識(季節・生活習慣・職業・自然科学)】
出題パターンの例
基礎:季節・月ごとの行事(全学年共通)
- 「『3月』はいつですか?」「何がありますか?」
- 「冬に咲く花は?」「春の野菜は?」
応用:生活常識・職業(難関校で出題)
- 「これは何の道具ですか?何に使いますか?」(台所道具、工具など)
- 「この職業の人は何をしますか?」
発展:自然科学・体験を前提とした問題(最難関校で出題)
- 「野菜を切るとどんな断面が見えますか?」(実際にトマトやニンジンを切って体験させる必要あり)
- 「どの動物は冬眠しますか?」
学校別の傾向
- 理英会の調査で全校15~20%の出題率
- 女子校(東洋英和・聖心):生活常識を家庭教育の一環として重視
- 進学校(早実・慶應):自然科学や実験を通じた理解度を確認
常識が不足しがちな子の特徴:保育園・幼稚園から帰宅後すぐに塾通いで季節行事を体験する時間がない、親がお手伝いをさせていない、季節ごとの自然体験が不足している
攻略のポイント
- 季節行事を意識的に体験させる(七夕飾り作りやお正月準備など)
- 親子で料理や片付け、洗濯のお手伝いを毎週実施する
- 季節ごとに野菜や果物を実際に切ってみる体験学習を取り入れる
【単元6:推理・規則性(パターン認識・論理的思考)】
出題パターンの例
基礎:規則を探す(全学年共通)
- 「□△□△□? 次は何ですか?」
- 「1, 2, 3, 4, ? 次の数字は?」
応用:複雑な規則性(難関校で出題)
- 「△は○より2個多い。△が5個なら○は何個でしょう?」
- 「毎日3個ずつ増える場合、10日目には何個になるでしょう?」
発展:複数条件の組み合わせ(最難関校で出題)
- 「赤いボールは青いボールより3個多く、黄色いボールは赤いボールより1個少ない。黄色が4個なら全部で何個でしょう?」
学校別の傾向
- 早稲田実業初等部:規則性やパターン認識の問題が頻出
- 慶應義塾幼稚舎:複数条件の組み合わせ問題が出題される
- 女子校:推理より常識を重視する傾向
推理が苦手な子に多い失敗例:規則を探すという概念が理解できていない、複数の情報を同時に処理できない、失敗を恐れてすぐ諦める
攻略のポイント
- 毎日規則性パズルを1問、親子で一緒に解く習慣をつける
- 最初は簡単な規則から始め、規則を探すことの楽しさを伝える
- 失敗しても「いい質問だね」と褒めて、思考力を伸ばす環境を作る
学校別ペーパー試験の難易度と出題傾向
学校難易度 問題数 時間 最重要単元 難易度の理由 慶應義塾幼稚舎 ⭐⭐⭐⭐⭐ 40~50問 50分 図形(鏡絵)、数量(差) 複雑な指示文、複合問題 早稲田実業初等部 ⭐⭐⭐⭐ 35~45問 45分 推理、規則性、言語 「なぜ?」を問う問題 東洋英和女学院 ⭐⭐⭐⭐ 30~40問 40分 言語、記憶 語彙力・理解力重視 聖心女学院小学部 ⭐⭐⭐⭐ 30~40問 40分 記憶、言語 心情読み取り 立教小学校 ⭐⭐⭐ 30~40問 40分 図形(立体) 立体図形の理解 学習院初等科 ⭐⭐⭐ 25~35問 35分 数量、常識 基本的な理解で十分 洗足学園小学校 ⭐⭐⭐⭐ 35~45問 45分 全分野バランス 広範な知識を要求 白百合学園小学校 ⭐⭐⭐⭐ 30~40問 40分 言語、記憶 細かい理解度を確認
ペーパー試験でありがちな失敗と改善策
失敗1:問題文を最後まで聞かずに答えてしまう
❌ 例:親が「りんごが3個あります。2個食べました。残りは?」と聞く前に、子どもが「足すんだ、3足す2は5」と答えてしまう。
✅ 改善策:問題文が終わるまで何もしないで聞く練習を繰り返しましょう。親が問題文の後に5秒の間を作る習慣をつけるのも効果的です。
失敗2:指示通りにできず時間ロスや減点になる
❌ 例:親が「赤いペンで四角の中に〇を書きなさい」と言ったのに、子どもが「青いペンで三角の中に〇を書く」など間違える。
✅ 改善策:複数の指示がある場合は復唱練習を取り入れましょう。親が「言ったことを自分の言葉で繰り返して」と確認する習慣をつけると良いです。
失敗3:時間配分ができず後半が白紙になる
❌ 例:最初の10問に15分かけ、残り35問を20分で解かなければならず時間が足りなくなる。
✅ 改善策:1問あたり1~2分を目安にペースを意識させましょう。タイマーを使い「あと5分で5問終わらせよう」と声かけするのも効果的です。
失敗4:難しい問題をすぐに諦めてしまう
❌ 例:子どもが「これ難しい、わかりません」とすぐに答えを諦める。
✅ 改善策:まずは30秒考える習慣をつけ、それでもわからなければ次に進むという粘り強さを育てましょう。
ペーパー試験の効果的な勉強時間の目安
年中期(月~木)
- 朝学習:15分(1単元に集中)
- 合計:約15分/日
年長期・秋まで(月~金)
- 朝学習:20分(難易度の高い問題に挑戦)
- 帰宅後:15分(朝の問題の復習と解説)
- 合計:約35分/日
年長期・秋から冬(月~金)
- 朝学習:25分(志望校の過去問演習)
- 帰宅後:20分(採点・復習・解説)
- 合計:約45分/日
週末(土日)の学習例
- 土曜:模試(50~60分)+復習(30分)
- 日曜:学校別対策(志望校2校分、各30分)+親子での出題練習(15分)
まとめ:ペーパー試験は繰り返しと習慣が鍵
ペーパー試験で安定した得点を狙うには、毎日少しずつ繰り返し学習することが何より重要です。
最難関校の問題は決して奇抜なものではなく、基礎を確実に理解した上で複数の要素を組み合わせたものです。
対策の優先順位は以下の通りです。
- 基礎の確実な理解(数量や図形の基本を固める)
- 聞く力・理解力の育成(毎日の読み聞かせや親子の対話を通じて)
- 苦手単元への集中対策(得意分野に偏らず苦手を重点的に伸ばす)
- 志望校の過去問演習(秋以降、時間が許せば積極的に取り組む)
本記事で紹介した6つの単元を、年中期は週2回、年長期は毎日15~20分程度の学習を継続することで、難関校のペーパー試験でも安定した得点が期待できます。焦らず、着実に取り組んでいきましょう。

