お受験ラボ編集部の私です。小学校受験を考えるあなたにとって、国立小学校と私立小学校のどちらを選ぶべきかは大きな悩みの種でしょう。この記事では、「受験の難しさ」「費用」「学校生活」「親の負担」という4つの視点から、国立と私立の小学校受験を具体的なデータや事例を交えて比較します。共働き家庭の現実的な選択肢についても触れ、あなたの判断材料を増やすお手伝いをします。
はじめに:「受験難度」と「学校選択」は別の問題
よく聞かれる質問に「国立と私立、どちらが難しいのか?」があります。しかし、これは一概に答えられるものではありません。子どもの個性や家庭の状況によって、最適な選択は変わるからです。
この記事では、国立小学校と私立小学校の特徴を「試験難度」「費用」「学校生活」「親の負担」という4つの軸で整理し、あなたが納得できる選択をするための情報を提供します。
国立小学校と私立小学校の基本情報
国立小学校の現状
全国の国立小学校数
- 全国に67校(全小学校の約0.3%)
- 東京都内は6校のみ
- 神奈川県には2校
代表的な国立小学校(東京都)
- 東京学芸大学附属小学校(目黒校舎・竹早校舎)
- 東京学芸大学附属世田谷小学校
- 学習院初等科(一部で国立に分類されることも)
- 筑波大学附属小学校
私立小学校の現状
首都圏の私立小学校数
- 約150校以上が存在
- 難関校から新設校まで多様なレベルがある
代表的な私立小学校
- 慶應義塾幼稚舎
- 早稲田実業初等部
- 東洋英和女学院小学部
- 立教小学校
- 学習院初等科
試験内容と難易度の違いを理解する
国立と私立の試験方式の違い
項目国立小学校私立小学校選考方式一次選考は抽選、二次選考は筆記・面接面接・筆記・行動観察運不運の要素抽選があるため大きい実力重視で判定試験日程全国一斉で同日学校ごとに異なる複数受験抽選で制限されるため難しい複数校受験が前提
国立小学校受験の特徴
試験の流れ
- 一次選考(抽選):応募者多数のため、抽選で受験者を決定
- 二次選考(筆記・面接):抽選に当選した受験者が筆記試験と面接を受ける
抽選の現実
- 東京学芸大学附属小学校(目黒校舎)の倍率は10倍以上
- 出願者約3,000名に対し、受験者は約500名(抽選で決定)
- 勉強が完璧でも抽選に外れれば受験できないという厳しい現実がある
試験内容
- ペーパーテスト:数量・図形・言語・記憶など、私立と同様の内容
- 親子面接:親の教育観を深く問われる傾向が強い
- 行動観察:集団での行動を重視
試験の特徴
- 基本的な学習内容の理解度を重視
- 奇抜な問題は少なく、地道な学習で対応可能
- 文部科学省の教育カリキュラムに基づいた問題が中心
私立小学校受験の特徴
試験の流れ
- 出願:気になる学校すべてに出願可能
- 試験:ペーパー、行動観察、面接を組み合わせて実施
- 合格発表:学校ごとに異なり、東京都では10月~11月が中心
試験内容
- ペーパーテスト:出題範囲が広く、学校ごとに傾向が異なる
- 行動観察:集団での協調性やリーダーシップを評価
- 親子面接:学校の教育方針との適合性を確認
- 工作・絵画:学校によって実施されることもある
試験の特徴
- 子どもの個性や親の教育観を重視
- 学校の教育方針に合致しているかが合否のポイント
- 難関校では思考力や応用力を問う問題が多い
複数受験の実態
- 多くの受験生は第1志望、第2志望、安全校の複数校を受験
- 試験日程が重なることもあり、親の戦略が重要になる
費用面での比較
国立小学校の年間費用
項目金額備考授業料0円国が負担給食費月4,000~5,000円年間約50,000円制服代30,000~50,000円入学時のみ教材費・各種費用月1,000~3,000円年間約15,000~30,000円PTA会費月500~1,000円年間約6,000~12,000円修学旅行・遠足年1回、20,000~40,000円**年間合計約110,000~150,000円給食費を含む
国立小学校の最大の魅力は授業料が無料なことです。初期費用も抑えられ、年間の負担は私立の10分の1以下に収まります。
私立小学校の年間費用
項目金額備考授業料月40,000~80,000円学校により異なる給食費またはお弁当代月3,000~8,000円制服代50,000~100,000円入学時のみ教材費・各種費用月5,000~10,000円年間約60,000~120,000円PTA会費月500~2,000円年間約6,000~24,000円修学旅行・遠足年1回、50,000~150,000円海外研修もあり課外活動(オプション)月1,000~10,000円英語・体操など**年間合計約800,000~1,200,000円給食費を含む
私立小学校は年間100万円を超える費用がかかることが多く、寄付金を求められる場合もあります。実際の負担はさらに大きくなることも念頭に置いてください。
受験準備にかかる費用の比較
項目国立小学校私立小学校塾代(年間)40~60万円60~100万円特別講習・模試10~20万円20~50万円受験料1校20,000円複数校で100,000~200,000円**受験準備費用合計約60~90万円約100~200万円
学校生活の違いを知る
国立小学校の学校生活
教育内容
- 文部科学省の教育カリキュラムを基本に据える
- 各校の独自教育方針を加味している
- 実験や研究の場として先進的な教育を行うこともある
特徴
- 標準的で質の高い教育を確実に提供する
- 中学受験準備が十分でない場合もある(学校による)
- 卒業後は受験なしで公立中学に進学するケースが多い
通学
- 通学区域の制限が多い
- 近所の友達と同じ学校に通う子どもが多い
私立小学校の学校生活
教育内容
- 学校ごとに独自のカリキュラムを持つ
- 先取り学習を行う学校も多い
- 中学受験を前提とする学校やエスカレーター式進学を前提とする学校がある
特徴
- 学校の教育方針に基づいた独自の教育を提供
- 卒業後の進学先が多様(中学受験、エスカレーター進学など)
- PTA活動が活発で、親の負担が大きい傾向にある
通学
- 通学区域の制限がなく、遠方からの通学も多い
- 親の希望で学区外に進学する子どもが多い
親の負担の違いを把握する
国立小学校での親の負担
受験準備期間(年長の1年間)
- 塾への送迎は週2~3回程度
- 家庭学習のサポートは週3~4時間程度
入学後
- PTA活動は月1~2時間程度
- 学校行事への参加は年5~10回程度
- 総合的な負担は中程度
メリット
- 授業料が無料で経済的負担が軽い
- 親の関与を過度に求められない傾向がある
デメリット
- 通学区域の制限があり、引っ越しが難しい場合がある
私立小学校での親の負担
受験準備期間(年長の1年間)
- 塾への送迎は週3~4回程度
- 家庭学習のサポートは週4~6時間程度
- 学校説明会には10校以上を訪問することもある
- 複数校の受験は平均3~5校
入学後
- PTA活動は月3~8時間程度(役員になると20時間以上)
- 学校行事への参加は年10~20回程度
- 学校との連携が密で、学習支援や面談が頻繁にある
- 総合的な負担は非常に大きい
メリット
- 教育内容が充実している
- 卒業後の進学先が明確である
デメリット
- 年間100万円を超える経済的負担
- PTA活動の負担が大きく、共働き家庭には対応が難しいこともある
- 学校説明会が平日に開催されることが多く、有給取得が必要になる場合がある
共働き家庭にとっての現実的な選択肢
共働き家庭が国立小学校を選ぶ理由
✅ 経済的なメリットが大きい
- 授業料が無料で、年間費用が私立の10分の1以下
✅ 親の負担が比較的軽い
- PTA活動が少なく、学校からの過度な関与が少ない傾向
✅ 受験準備が効率的
- 抽選に当たることが前提なので、複数校受験の戦略が不要
- 塾の対策も比較的シンプル
❌ 課題もある
- 抽選に外れるリスクがあるため、運の要素が強い
- 通学区域の制限があり、引っ越しが難しい場合は選択肢が狭まる
- 通学距離が遠くなり、送迎の負担が増えることもある
共働き家庭が私立小学校を選ぶ理由
✅ 合否は実力で決まる
- 勉強がしっかりできれば合格の可能性が高い
- 複数校受験で合格の確率を上げられる
✅ 教育内容が充実している
- 学校ごとに特色ある教育方針がある
- 英語教育や探求学習など先進的なカリキュラムを受けられる
✅ 学童保育が充実している
- 共働き家庭向けに学童やアフタースクールが整備されている学校が増加中
- 帰宅時間が遅い親をサポートする体制が整っている
❌ 課題もある
- 年間100万円を超える費用負担が大きい
- PTA活動の負担が重く、共働き家庭には対応が難しいこともある
- 学校説明会が平日に開催されることが多く、有給取得が必要になる場合がある
国立と私立、どう選ぶ?決定のための4ステップ
Step 1:「志望理由」を明確にする
なぜ小学校受験をするのか、原点に立ち返ることが大切です。
- 中学受験を避けたいなら、エスカレーター式の私立小学校が向いているかもしれません
- 標準的で質の高い教育を望むなら国立小学校が選択肢に入ります
- 子どもの個性を尊重した教育を望むなら私立小学校が適している場合があります
Step 2:「経済状況」を客観的に見直す
6年間、年間100万円以上の負担に耐えられるかどうかを現実的に判断しましょう。
- 可能なら私立小学校も選択肢に入ります
- 難しい場合は国立小学校に絞るのが現実的です
Step 3:「親の時間的余裕」を評価する
受験準備に月30~40時間を確保できるかどうかがポイントです。
- 確保できるなら私立小学校の複数受験も視野に入ります
- 難しい場合は国立小学校に絞るべきでしょう
Step 4:「通学距離」を確認する
毎日通学可能な距離に学校があるかを確認しましょう。
- 国立小学校は通学区域の制限があり、東京都内で6校のみ
- 私立小学校は全国から選べるため選択肢が広い
よくある選択の失敗パターンとその対策
❌ 失敗1:国立に落ちてから急いで私立対策を始める
国立小学校の一次選考は抽選で行われるため、不合格後に私立対策を始めると準備期間が不足し、十分な対策ができません。
✅ 対策:年長の春から国立と私立の両方の対策を並行して進めることが望ましいです。
❌ 失敗2:費用を気にせず複数校の私立受験をする
複数校受験は受験料や塾費用がかさみ、200万円を超えることもあります。経済的に破綻するリスクがあるため注意が必要です。
✅ 対策:必ず合格させたい第1志望とその次の候補校、計2~3校に絞ることをおすすめします。
❌ 失敗3:国立小学校は親の負担が少ないと誤解する
国立小学校でも入学後はPTA活動や学校行事への参加が求められます。授業料無料だからといって親の時間的負担がないわけではありません。
✅ 対策:国立・私立に関わらず、学校説明会で親の負担についてしっかり確認しましょう。
まとめ:国立か私立かではなく「子どもに最適な選択を」
国立小学校と私立小学校の選択は、単に難易度や費用だけで決められるものではありません。大切なのは以下の3点です。
① 子どもの個性と親の教育観が合う学校かどうか
② 6年間、親が支え続けられる環境かどうか
③ 子ども本人がその学校に行きたいと思っているか
共働き家庭で経済的余裕が限られる場合は国立小学校が現実的な選択肢となります。一方、子どもの個性を活かした教育を望むなら私立小学校も十分検討に値します。
最も重要なのは、親の野心ではなく子どもの成長を第一に考えることです。高倍率を乗り越えて合格した学校が、その子にとって最適な環境であれば、6年間の学校生活は子どもの可能性を最大限に伸ばす時間になるでしょう。


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