こんにちは。お受験ラボ編集長の私です。今回は、小学校受験で見落とされがちな「工作・巧緻性テスト」について詳しくお話しします。多くの親御さんはペーパーテスト対策に力を入れがちですが、実は工作の巧緻性で合否が左右されることも少なくありません。この記事では、巧緻性とは何か、どのように評価されるのか、そして具体的なトレーニング方法まで、わかりやすく解説します。
はじめに:「巧緻性」は短期間で身につくものではありません
小学校受験対策で、工作や巧緻性テストを軽視してしまう方は多いです。しかし「ペーパーテストができれば工作はなんとかなるだろう」という考えは危険です。巧緻性は短期間で身につくものではなく、年中・年長の期間を通じて日々の積み重ねが必要なスキルです。
この記事では、巧緻性の意味から具体的な訓練方法まで、丁寧にご案内しますので、ぜひ参考にしてください。
巧緻性とは?手先の器用さを測る力
巧緻性の定義
巧緻性(こうちせい)とは、手や指先を器用に使う力のことを指します。小学校受験では、巧緻性を通じて以下の3つのポイントが評価されます。
①手先の器用さ
- 鋏で正確に切れるか
- 折り紙をきれいに折れるか
- 紐を正確に結べるか
②指示への理解度
- 口頭の説明を聞いて、その通りに作れるか
- 複数の工程を正確に実行できるか
③丁寧さ・集中力
- 細かい作業を丁寧に進められるか
- 最後まで粘り強く取り組めるか
巧緻性テストの種類と学校別の出題傾向
【種目1】ハサミ切り
評価ポイント:
- 正確さ(線の上を切れるか)
- 安定性(ぐらつかずに切れるか)
- スピード(制限時間内に終えられるか)
よくある出題例:
- 直線や曲線を切る
- 紙・布・厚紙など複数の素材を切る
- 切り込みを入れるなど複雑な指示
学校別傾向:
- 女子伝統校(東洋英和・聖心):ハサミ切りを重視
- 男子校(立教):やや軽視
- 国立小学校:基本的なハサミ切りが中心
【種目2】折り紙
評価ポイント:
- 図形理解力(折ることで図形を理解できるか)
- 正確さ(端をぴったり揃えられるか)
- 創造性(折った後の表現力)
よくある出題例:
- 基本的な折り方(チューリップ、鶴など)
- 複数工程を組み合わせた複雑な作品
- 折った後に切る・貼る・描くなどの複合課題
学校別傾向:
- 早稲田実業初等部:複合課題を重視
- 筑波大附属小:複雑な折り紙課題が多い
- 成蹊小学校:折った後に装飾を加える課題
【種目3】ビーズ通し・紐通し
評価ポイント:
- 手指の細かい動き
- 集中力(単調な作業を続けられるか)
- 速度(制限時間内に終えられるか)
よくある出題例:
- ビーズを紐に通す
- 指定の順番で複数色のビーズを通す
- 通した後に結ぶ(片結び・蝶結び)
学校別傾向:
- 多くの学校で基本科目として出題
- 難関校でも確実な実施が求められる
【種目4】ちぎり
評価ポイント:
- コントロール力(指定の大きさ・形でちぎれるか)
- 細かい作業への集中力
よくある出題例:
- 新聞紙を途中で切れないようにちぎる
- 色画用紙を指定のサイズでちぎる
- ちぎった材料を貼って作品に仕上げる
【種目5】紐結び・蝶結び
評価ポイント:
- 生活スキル(日常生活で必要な技能)
- 指の器用さ
よくある出題例:
- 片結び(一重結び)
- 蝶結び(靴ひもを結ぶ要領)
- 複数の紐を結ぶスピード勝負
学校別傾向:
- 女子伝統校:特に重視される生活スキル
- 国立小学校:生活技能テストとして出題
【種目6】塗り絵
評価ポイント:
- 色彩感覚
- 集中力(枠線からはみ出さずに塗れるか)
よくある出題例:
- 動物や風景の塗り絵
- 色の指定がある場合と自由に塗る場合
【種目7】豆つかみ・お箸
評価ポイント:
- お箸の正しい使い方
- 細かい動き
- 集中力
よくある出題例:
- 豆をお箸でつかみ別の容器に移す
- 制限時間内に何個移せるか
学校別傾向:
- 国立小学校:生活技能テストとして重視
- 女子伝統校:礼儀作法の一部として重視
自宅でできる巧緻性トレーニング30パターン
Aグループ:ハサミ切り対策(毎日実施がおすすめ)
- 直線切り:色画用紙に引いた黒線の上を切る練習
- 曲線切り:波線や円を切る練習
- 複数材料を切る:紙・布・厚紙など異なる素材で練習
- 細かい切り込み:くびれを作るなど複雑な指示に挑戦
- 速度練習:5分で10個切るタイムアタック
- 正確さ重視:ゆっくりでも線の上を100%切ることを目標に
- はさみの角度調整:刃の動かし方を意識して切る
- 小さなはさみで練習:試験で使うサイズに慣れる
- 両手の協調性:はさみを持つ手は動かさず、紙を回す練習
- ゴミの整理:切ったゴミを机の端にまとめる習慣をつける
Bグループ:折り紙対策(週3~4回の実施が理想)
- チューリップ:基本の3ステップ折り紙
- 紙飛行機:複数工程を組み合わせた折り方
- 鶴:代表的な複雑折り紙
- 兜(かぶと):複数工程を正確に進める練習
- 複合課題:折る→切る→貼るを組み合わせる
- 折った後に色を塗る:マーカーで顔を描くなど
- 同じものを複数作る:3つのタコを折ってタワーに積む
- 折った紙を丸める:タコの体を丸める作業
- 端をぴったり揃える:山折り・谷折りの精密さを意識
- 蛇腹折り:繰り返し折る技法の練習
Cグループ:紐通し・ビーズ対策(毎日実施が効果的)
- ビーズブレスレット作り:指定の順番で色ビーズを通す
- 複雑なパターン通し:赤2個、青1個、黄1個など指定通り
- 細い紐で練習:試験に近い細さの紐を使う
- スピード練習:1分間に10個通すタイムアタック
- 通した後に結ぶ:片結び・蝶結びまで完成させる
- 大きなビーズから小さなビーズへ:難易度を段階的に上げる
- 集中力トレーニング:30分間続けてビーズ通しを行う
- 色の認識:赤のビーズだけを探して通す分類作業
- 両手の協調性:片手でビーズを支え、片手で紐を通す
- 制限時間内での完成:5分で仕上げるプレッシャー練習
Dグループ:その他の巧緻性対策
紐結び:
- 毎日片結び・蝶結びを5回練習する
- 親子で風呂敷を結ぶなど日常生活での練習
- 靴ひもを自分で結ぶ習慣をつける
ちぎり:
- 新聞紙を途中で切れないようにちぎる練習
- 色画用紙を指定サイズでちぎる練習
- ちぎった材料をのりで貼ってモザイク画を作る
塗り絵:
- 週1回、枠線からはみ出さずに塗る練習
- 色指定と自由塗りの両方を行う
お箸・豆つかみ:
- 食事の際に毎日お箸の正しい使い方を習慣化
- 豆つかみゲームで豆を別容器に移す練習
よくある失敗例とその改善策
❌ 失敗1:「工作を『楽しい遊び』ではなく『練習』として押し付ける」
多くの親御さんは受験対策として、無理に工作をさせてしまいがちです。その結果、子どもが工作を嫌いになってしまうこともあります。
✅ 改善策:
- 親子で一緒に作る楽しさを最優先にする
- 完成度よりも過程を楽しむことを大切にする
- 週に1回は親子で工作タイムを設ける
❌ 失敗2:「短期間で巧緻性が身につくと思い込む」
年長の秋から急に工作対策を始める方もいますが、巧緻性は年中の段階から積み重ねることが重要です。
✅ 改善策:
- 年中の時点から毎日軽い工作を習慣化する
- 毎日15分の継続が、直前の急ごしらえより効果的
❌ 失敗3:「完成度を重視しすぎて子どもを叱る」
「もっときれいに切って」「曲がってるよ」と叱ると、子どもの自信を損ないます。
✅ 改善策:
- きれいさより正確さを重視する
- 完成度よりも丁寧に取り組む姿勢を褒める
❌ 失敗4:「得意な課題を練習しなくなる」
ハサミ切りが得意だからと練習をやめるのは危険です。得意な課題こそ定期的に復習し、自信を維持しましょう。
✅ 改善策:
- 得意な課題も週1回は復習する習慣をつける
- 複数の課題をローテーションで練習する
学校別に見る巧緻性テストの重要度
学校重要度特に重視する課目対策の優先順位慶應義塾幼稚舎⭐⭐基本的な巧緻性中程度早稲田実業初等部⭐⭐⭐複合課題(折る→切る→貼る)高い東洋英和女学院⭐⭐⭐⭐ハサミ切り、紐結び非常に高い聖心女学院小学部⭐⭐⭐折り紙、紐結び高い筑波大附属小学校⭐⭐⭐⭐複雑な工作課題非常に高い立教小学校⭐⭐基本的な工作中程度学習院初等科⭐⭐基本的な巧緻性中程度
親が見落としがちなポイント
ポイント1:道具選びの重要性
試験本番で使うはさみは、普段使っているものとサイズが異なることがあります。複数サイズのはさみで練習しておくことが大切です。
ポイント2:利き手の確認
子どもの利き手を年中のうちに確認しておきましょう。試験直前に「実は左利きだった」となると対策が遅れます。
ポイント3:姿勢も評価対象
工作の試験では、子どもの姿勢も見られています。机にまっすぐ座り、落ち着いて作業に取り組めているかがポイントです。
ポイント4:待ち時間の態度
複数人で課題を行う際、自分の番まで静かに待てるかも評価されます。
巧緻性テスト対策のタイムライン
年中期
- 週2~3回、15分程度の簡単な工作を楽しむ
- 遊び感覚で工作に親しむことが大切
年長期(秋まで)
- 毎日15~20分の工作練習を継続する
- ハサミ切りや折り紙など基本技能を習得する
- 複合課題に備えた準備を進める
年長期(秋から冬)
- 毎日20~30分の集中的な練習を行う
- 志望校の過去問を活用した特化対策を実施
- 制限時間内で完成させる練習を意識する
まとめ:「巧緻性」は日々の積み重ねで育つ力です
小学校受験の工作・巧緻性テストは、短期間で身につくものではありません。年中の段階から毎日の軽い工作を習慣にすることで、自然と手先の器用さが育まれます。
大切なのは完成度ではなく、丁寧に最後まで粘り強く取り組む姿勢です。親が子どもを褒め、励ましながら、親子で工作を楽しむことが合格への近道になるでしょう。


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